第24話 クエスト達成
「ころころ……ばあば……」
コンコン、ガチャリ。
「座敷わらしちゃ~ん、ころころ持ってきたよ~」
「ころころ? ……っ!!」
「いや、これがそうなのか確証は持てなかったんだけどね。糸車でも違ったらもう全然分かんないわね……」
「ころころーっ!!」
「わっ!!」
妖精がいる2階の部屋へ糸車を運び込んだ瞬間、糸車に気付いた座敷わらしちゃんがものすごい勢いで糸車に走り寄って来る。
「どうやら正解みたいだね」
「ころころ! ころころ!」
「これはころころじゃなくて糸車よ。でもどうしましょう。これで遊ぶっていっても、わたし糸車なんて使ったことないし……マスターさんはありますか?」
「ワシも妻がやってるのをたまに見とっただけじゃしのう」
「ボクも勿論ないよ。ていうか糸車自体初めて見たよ」
「材料ならまだどこかにあったはずじゃ」
マスターさんはそう言って再び1階に降りていった。糸車が置いてあった物置で材料を探してきてくれるみたい。
「くるくる~くるくる~」
座敷わらしちゃんが糸車の車輪部分に付いているハンドルを回すと、糸車が動き出す。なるほど、そうやって糸を紡ぎ出していくのね。
「羊毛は無かったが綿ならあったぞ」
「これをどうやって糸にするのかしら?」
「わたわたつける! ぐるぐるす!」
「ん? ああ~なるほどなるほど」
「妖精ちゃん、何て言ってる?」
「ここのわっかに綿の先をくっつけて、ぐるぐるするらしいです。ちょっとやってみます」
綿をほぐし、糸車に付いている糸のわっかにくっ付ける。
「座敷わらしちゃん、準備出来たよ」
「くるくる~!!」
「「「お、おお~!!」」」
座敷わらしちゃんがハンドルを回すと、綿が引き込まれて少しずつ糸になり、横に付いている棒みたいなところにグルグル巻きになっていく。
「すごい! 本当に糸になってる!」
「これは見ていて気持ちが良いね……魔法とは違う、なんというか、人類の叡智……」
「……ほほ。懐かしいのう」
「くるくる~!!」
__ __
「わたわた! ころころす!」
「えーっと、ここに引っかければ良いんだね?」
あれからしばらく糸車で遊び……遊んだというか、普通に糸を紡ぐ作業をしただけなんだけど、とにかく糸車で遊べて座敷わらしちゃんは満足してくれたみたい。
今はアサツキさんがサポート役をして一緒に糸を作っている。
「もしかしたら、今までワシにちょっかいをかけてきていたのは、この糸車を出してくれ、と言っていたのかもしれんのう」
「……奥さんと一緒に、糸車で遊んでいたんですかね?」
「ほっほ。全然気づかなかったよ。この妖精が作ってくれた糸で、ワシもなにか作ってみるとしようかの」
「妖精の紡いだ糸……なんか、とってもロマンチックですね」
「ふむ、そういう触れ込みで糸を売った方が儲かるかの」
「マスターさん、それは全然ロマンチックじゃないです」
「ほっほ」
これならもう、座敷わらしちゃんを閉じ込めておかなくても大丈夫になりそうね。
「ベルベル! ころころのおれい! まほー!」
「あっ座敷わらしちゃん。え? ころころのお礼? そんな、別にいいのに……ちょっと待って、まほー? 魔法って言ったの?」
「くるくる~!」
「えっなに!?」
座敷わらしちゃんがわたしの頭に手を触れた瞬間、ぱああああ……と一瞬目の前が真っ白になり、なにかを閃いたような感覚に陥る。
「……ぴかぴかすとりんぐ?」
「急にどうしたんだいベルベルちゃん?」
「いや、その……今、座敷わらしちゃんが遊んでくれたお礼とかでなんか魔法を教えてくれて……」
「魔法を? それってまさか……」
ぴかぴかすとりんぐ:手から光る妖力の糸を出し、魔物を拘束する。
「魔物を、拘束……?」
魔法の使い方や効果を元から知っていたかのように、頭の中に情報が流れ込んでくる。い、一体なんなの……?
「ベルベルちゃん、この座敷わらしの妖精から魔法を教わったのは確かなんだね?」
「はい、教わったというか、授かった、みたいな感覚なんですけど」
「それはもしかしたら、“妖精魔法”かもしれない」
「……えっ?」
妖精、魔法?
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