第25話 妖精魔法
「ころころ~」
「ほっほっほ。たしかにこりゃあ結構楽しいかもしれんのう」
宿屋『金の糸車』に棲みついた妖精の座敷わらしちゃんから、遊んでくれたお礼にと教えてもらった魔法『ぴかぴかすとりんぐ』。
アサツキさんの話によると、どうやらこれは『妖精魔法』というものらしい。
「アサツキさん、妖精魔法って、普通の魔法とは違うんですか?」
「ベルベルちゃんは、魔法についてどれくらい詳しいんだい?」
「全然です。この世界に来て、すぐに勇者候補を外されて城から追い出されちゃいましたので……」
本来なら今ごろ勇者育成学校とやらに入って、基礎の基礎から魔法の勉強をしている頃だろう。
「よし、それじゃあ魔女のお姉さんがこの世界の魔法の仕組みについて教えてあげよう。と、その前に……」
「その前に?」
「朝ごはん、食べに行かない?」
__ __
「いただきま~す……う~ん! やっぱりコロポックルのオムライスは最高ね!」
というわけで、アサツキさんと朝食を食べるためにビストロ・コロポックルにやってきました。
「なるほど、これがベルベルちゃんおすすめのオムライス……たしかにとても美味しい。それに……」
「ウマイウマイ?」
「こんなに可愛い妖精さんもいるなんてね」
「ウチのマスコット店員のオムオムちゃんだよ!」
ウェイトレスのホップちゃんが飲み物のおかわりを入れてくれる。オムライスの妖精ちゃん、名前を付けてもらったのね。
「ふふ、なんだかベルベルちゃんみたいな名前だね」
「オムオムちゃんの生みの親だからね!」
「ちょっと違うけど……」
オムオムちゃんはコロポックルのオムライスが大好きな食器の妖精で、もっとお客さんに食べてもらいたいという気持ちが行き過ぎて無意識にイタズラをしていたところを、オムライスのサンプル品と合体させることで、お店のマスコットとして今では大人気になっている。
「オムオムちゃんも可愛いけど、そっちの看板娘ちゃんも可愛いね」
「えっ? そ、そんな、ウチなんて別にぃ……えっへへ」
「アサツキさん、誰かれ構わずそういうことするのやめたほうがいいですよ」
「な、なんでさ。ただ褒めただけだろう?」
自覚無いのが1番よくないわ。いえ別に、やきもちとかじゃないんだけど……
「コホン。と、とにかく、宿で言っていた魔法の話の続きをしようか」
「あ、はい。お願いします」
「まず、ボクたちが使う魔法というのは主に2種類に分けられる。“精霊魔法”と“魔石魔法”だ」
「精霊魔法と、魔石魔法……」
アサツキさんの説明によると、精霊魔法というのは、この世界にいる“精霊”と呼ばれる生命体の力を借りて行使する魔法のことで、これは精霊使いの才能がある者や、精霊に好かれやすい者など、一部の人にしか使えないらしい。
そして、魔石魔法というのは使い方を学べば基本的には誰にでも使える魔法で、魔道具の材料などにもなる“魔石”の魔力を使って発動する魔法のことらしい。
「魔法を使うまでの工程は違えど、この二つはどちらも根幹は一緒でね。魔法を発動するのに必要なのは“魔力”だ」
「魔石魔法は分かりますけど、精霊魔法も魔力なんですか?」
「精霊自体が魔力の塊というか、高濃度の魔力が集まって生まれた生命体だからね。その精霊にお願いして力の一部を借りる、というわけさ」
「なるほど……」
「そして例外として存在するのがベルベルちゃん、君の“妖精魔法”だ。これは本来、妖精だけが使える魔法でね。これにはなんと、魔力を必要としないと考えられている」
「妖精魔法は魔力が要らないんですか? それじゃあ一体なにをエネルギーにして……」
「ボクたちは“妖力”と呼んでいるよ」
妖力……なんというか、妖怪同士が戦う少年漫画とかで出てきそうな力ね。
「妖精魔法はあまり研究が進んでいなくてね。まず今までに妖精魔法を使えるという人間がいなかったのと、妖精魔法自体あまり強いものでもないから、調べている人も少ないんだ。調べようにも話が通じないしね」
「そうなんですね」
あれ? でも座敷わらしちゃんに教えてもらった魔法の効果は、魔物を拘束するとかだったから、結構役立ちそうな気もするんだけど……
「そんなわけでベルベルちゃん、妖精魔法の取り扱いには十分注意を払うように」
「え、どうしてですか?」
「いくら今まで注目されていなかった魔法といえど、ベルベルちゃんは人類で初めて妖精魔法を使える人になるかもしれないからね。悪~い人たちに捕まって、人体実験に使われちゃうかもしれないよ?」
「…………」
「使う時は普通の魔法って言っといた方がいいかもね」
「そ、そうします……」
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