第27話 普通の依頼も受けてみる


「お待たせいたしました、こちらがベルベルさんのギルドカードになります」



「あ、ありがとうございます」



 そんなこんなでアサツキさんと冒険者ギルドについて話していたら、受付のお姉さんに呼ばれて出来立て発行ホヤホヤのギルドカードを受け取る。発行ホヤホヤ?



「最初はEランクからとなっております。このカードでDランクまでのクエストを受けられます。もちろん、Fランク……フェアリークエストも可能ですよ。どんどん依頼をこなして、是非ともSランク冒険者を目指してくださいね」



「あ、あはは……」



 今のランクでもフェアリークエストなら受けられるし、別に高ランクの冒険者にならなくてもいいかな。っていうかわたしって、冒険者ですらないんじゃないかしら。



「ちなみに他の冒険者の方と共同で依頼を受ける場合は、その中でランクが1番高い方と同じランクのクエストまで受けることができますよ」



「だそうだよ。ベルベルちゃん、ボクとAランクの依頼やってみる?」



「え、遠慮しておきます……」



 チラッとAランクの依頼が貼ってある掲示板を見てみたんだけど、大体が強力な魔物の討伐クエストだった。

嫌よ、わたしまだ死にたくないわ。

あとは強い魔物がいる森や洞窟にしかない薬草や素材の納品とか、強い魔物を倒した時に手に入るレアな魔石とか……うん、結局魔物を討伐しないといけない感じね。



「でも、せっかくだし魔物討伐系のクエストも挑戦してみたい気持ちはあるのよね……」



 座敷わらしちゃんから教えてもらった妖精魔法、『ぴかぴかすとりんぐ』が本当に魔物に効果があるのか試してみたい。

それに、わたしって一応勇者候補としてこの世界に来たんだし。



「Eランクだと比較的優しいというか、安全なものが多くて魔物討伐系はないのよね。Dランクは……あ、あったわ。えーと、どれどれ……」



 ・依頼No.20963

・クエストランク:D

・依頼人:漁業ギルド

・依頼内容:ミオカンデ湖に出没するダックフロッグの討伐

・報酬:8500エル



「フロッグ……た、多分カエルよね」



 カエル、カエルかあ……ちょっとこれは、また今度にしておこうかしら。

いえ、カエルが苦手ってわけじゃないのよ? そもそも外で遊んだ経験が少ないからカエルに関わったこともあんまりないし。



「おっベルベルちゃん討伐依頼受けるんだ。ふむふむ、ダックフロッグか。そういえばそろそろ冬眠から出てくる時期だね」



「と、冬眠……やっぱりカエルだ……」



「あ、その依頼受けてくれますか? 最近増えてきちゃって困ってるんですよ」



 う、そう言われるとやりませんって言いずらい……わたしは典型的な日本人なので……



「ベルベルちゃんは魔物討伐初めてだろうし、受けるならボクも手伝うよ」



「じゃ、じゃあやってみようかな」



「お買い上げありがとうございます」



 お買い上げじゃないわよ。



 __ __



「いやー依頼を受けてくれた子がこんな可愛らしい嬢ちゃんだとはな! なんにせよありがてえわ!」



「は、はい! がんばります……!」



 依頼人の漁業ギルド会館へ行き、クエストの説明を受ける。

どうやら王都の近くにあるミオカンデ湖という湖に、冬眠明けのダックフロッグという魔物が大量発生して湖の魚を食べてしまい、魚の漁獲量が減ってきているとのことだった。



「ちいせえヤツなら俺らでも倒せるんだが、たまに湖のヌシみてえなでっかいヤツがいてなあ。そういうのを見かけたら積極的に討伐してほしいんだわ」



「討伐の証明はどうしたらいいんだい?」



「ダックフロッグを倒すと青の魔石が手に入る。デカいやつならデカい魔石が手に入るんでな、それを討伐の証として、小さいのを30匹分でクエスト達成、デカいやつは小さいの10匹分だ。魔石はあんたたちが貰っちまって良いぜ」



「分かった、その条件でやらせてもらうよ」



「よっしゃ! それじゃあちょっくら頼んますわ! あ、これがダックフロッグの転写画ね。ミオカンデ湖にこいつらがいっぱいいるからよ」



 そう言って漁師ギルドの人が見せてくれたのは、人の腰の高さほどの大きさのカエルだった。何故か口がアヒルのクチバシみたいになっている。



「う、うわ……」



「これがちっちゃいヤツやな。デカいのは嬢ちゃんよりもデカいから食べられないように気を付けてな! がっはっは!」



「ウソでしょ」



 がっはっはじゃないわよ。

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