第51話 他人に厳しく自分に甘く
「へ~結構可愛い服売ってるわね。どう? ウォーリーちゃん」
「知らんがな―」
『占いなんかに頼ってる女は自分の人生を他人任せにしている』という頑固な考えで邪魔をしてくる鏡面の妖精、ウォーリーちゃん。
わたしは『占いって実は他人にお悩み相談やアドバイスを求めてるようで自分の考えに近いのを選ばせて後押ししてもらいたいだけ』説を提唱して考えを改めてもらうため、ウォーリーちゃんが出現した水晶を持って一緒に街へ出かけてみた。
「いい? ウォーリーちゃん。占いなんてね、結局は自分の信じたい都合の良い結果だけを信じるの。だから他人に人生を任せてる~みたいなのとは違うのよ」
「本当か~?」
「人生はね、そんな簡単じゃないのよ」
星座占いで1位だったからって手術が成功するとは限らないもの。
「あ、この服かわいい。あっこっちも。ねえウォーリーちゃん、どっちが似合うかしら?」
「自分の服くらい自分でだなー」
「いいからいいから」
「じゃあ、こっちー」
「えー? わたしはこっちだなー」
「ええ……なんだこいつー」
「あっこの服、アサツキさんに似合いそうね。でもわたしにはあんまりかなー。どう? ウォーリーちゃん」
「ベルベルには似合わないかなー」
「えー? 似合わないとかひどくない? わたしだってこういう服着てみたいのに」
「自分で言ったんじゃないかよー」
ウォーリーちゃん、めちゃめちゃ困惑してるわね。
「ほら、こんな感じでね、人にアドバイスを求めても、その答え通りにするとは限らないのよ」
「人間って、めんどくせー」
まあ、それはそうね。わたしもよく分かんない。
勇者候補降ろされたり、またスカウトされたり、ヒカルくんが何故か突っかかってきたり……
「あ、なんか美味しそうなの売ってる。魔女の杖チュロスだって、かわいい~」
先が少しくるっとしてる、魔法使いの杖みたいな形のお菓子。
ビャクヤの街のご当地お菓子とかかしら?
「どうしよう、1本買っちゃおうかな? ねえウォーリーちゃん?」
「買えばいいんじゃねー」
「あーでも昨日食べ過ぎちゃったからやめときましょう。あんな甘そうなの、ひょいひょい食べてたら太っちゃうもの」
「……なー、ベルベルー」
「ん? どうしたの?」
「もしかして、おまえがめんどくせーだけ?」
「…………」
そ、そんなことないわよ。ね?
__ __
「ん~! チュロス美味し~!」
「買ってんじゃんかよー」
ちょっと我慢できなくて。でも後悔はしてないわ、自分で選んだ道だから。
「どう? ウォーリーちゃん。これで占いの邪魔とかしたってしょうがないって分かったかしら」
「そうだなー……意外とブレないよなー」
そう、占いやったって人にアドバイス求めたって、結局は自分の意思が大切なのよ。
「あれ、ベルベルちゃんじゃないか。こんな所でお菓子なんか食べちゃって」
「あっアサツキさん!?」
「ダイエットするって言ってなかった? 意外と自分に甘いんだからベルベルちゃんは」
紙袋を抱えたアサツキさんと街で偶然出会う。
どうやら二日酔いが治ったらしい。
「アサツキさん、その袋に入ってる瓶って……」
「ん? お酒だけど」
「ついさっきまで二日酔いで苦しんでた人が何やってんですか」
「はっはっは! ベルベルちゃん知らないのかい? 迎え酒って言ってね、二日酔いには酒が効くのさ」
そんなわけないでしょ……まったく、自分に甘いんだからアサツキさんは。
「もう、今日はお酒禁止です! 多分占いとかやっても『お酒は飲まない方が良いでしょう』って言われますよ!」
「嫌だね! 占いなんてくだらない、ボクは自分の道は自分で決めるんだ!」
「たまには人のアドバイスも聞いてください!」
「ダイエットするとか言ってたのにチュロス食べてるベルベルちゃんの話は聞けないね!」
「ぐ、ぐぬぬ……!」
「……にんげん、めんどくせーなー」
人の意見を聞かなすぎるのもそれはそれで良くないわね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます