第49話 精霊補助



「精霊補助、ですか?」



「ええ。この方法なら魔力が無くても魔法を使えるわ」



 結局、魔道具の水晶に力を込めてみても起動することは出来なかった。

どうやら本当にわたしの魔力はゼロみたい。

魔力を発現させるポーションは副作用が怖いのでちょっと使いたくないと言ったら、サントリナさんからもうひとつの方法を提案された。



「精霊に頼んで、代わりに魔法を使ってもらったり、自分が魔法を使うための魔力を補助してもらったりするの」



「でも精霊魔法って、精霊と相性の良い人じゃないと使えないんじゃ……」



「精霊魔法とは少し違うのよ。あれは精霊との契約によって強力な魔法を行使するんだけどね、そこで寝っ転がってる彼女みたいに」



 そう言ってサントリナさんは、二日酔いでグロッキーになってるアサツキさんを横目で見る。

アサツキさん、今はこんなのだけど、元々『ウラハイル聖国』っていうところで勇者候補として活動してた精霊魔法の使い手だものね。



「精霊補助は、契約とかはしないで、その場で1度だけ力を貸してもらうの。こっちはよっぽど相性が悪い人以外は成功する確率が高いわよ」



「……ちなみに、よっぽど相性が悪い人というのはどんな感じの人ですかね?」



「そうねえ、魔法を邪なことに使おうとしてる人とか?」



「邪なこと?」



「催眠魔法で女の子に」



「あっはい大丈夫です。なんとなく察しました」



 多分あれね、倫理観を守ることが大切なのね。



「精霊補助を使うためには、謝礼品が必要なの」



「謝礼品ですか?」



「精霊は魔力の集合体が意思を持ったようなものでね、魔石のような、魔力が凝縮されたものをお礼としてあげるのよ」



 魔力が少しでもあるなら、普通に魔石魔法を使えば精霊補助をする必要はないんだけどね、とサントリナさんが呟く。

たしかに、精霊に魔石をあげて補助してもらうなら、そのまま魔石使えば良いものね。



「それでベルベルちゃん、魔石とか持ってたりするかしら?」



「ありますよ」



 そう言ってわたしは鞄の中から小さな青い結晶を取り出す。



「青の魔石ね。結構純度も高い……これはどこで?」



「ヘイリオスにいたときに、ダックフロッグっていう魔物の討伐クエストを受けまして」



「ああ、あの大きくて気持ち悪い……」



「はい……大きくて気持ち悪かったです……」



 正直ちょっと、あの魔物とはもう戦いたくないかな……



「でも、これなら精霊補助も成功すると思うわ」



「どうやってやるんですか?」



「両手で謝礼品の魔石を持って、あとは精霊にやってほしい事をお願いするだけ」



「なにか特別な呪文とかはないんですね」



「意外と簡単でしょ」



 とりあえず物は試しね。ちょっとやってみますか。



「えーと、精霊さん、精霊さん……わたしの代わりに彩見の水晶を起動してください……」



「別に声に出して言わなくてもよかったんだけど」



「えっそうなんですか?」



 ちょっと、恥ずかしいやつ……まあ良いわ。

これで精霊さんがお願い聞いてくれるのかしら。



「あら、水晶が濁ってきたわね」



「ちゃんと起動できたみたいです!」



 気付いたら手のひらの魔石が消えていた。

どうやら精霊さんがお願いを聞いてくれたみたい。



「本来なら、ここから色が変わって……」



「そうはさせないよー」



「きゃああああああ!?」



 やっぱりあのブラクラみたいな妖精さんが水晶の表面にいきなり浮かび上がってきて、なにも見えなくなる。

予想してたのに普通に驚いちゃった。



「と、とりあえず布で隠しましょう」



「今のが問題の妖精ちゃん?」



「ブラクラの妖精のウォーリーちゃんです」



「ブラクラ? ウォーリー?」



「探しちゃダメですよ」



「どういうこと?」



 わたしが適当なことを言ってるせいでサントリナさんが困惑してるみたい。



「えっと、水晶の妖精……いや、邪魔してくるから違うか。鏡の世界に住んでる妖精?」



「鏡面の妖精ってことかしら」



「そんな感じです」



 これから妖精さんに話をして、占いの邪魔をしないようにお願いして……



「よし、ベルベル、頑張ります」



「わっ」



「きゃあああああ!?」



「あはは! ベルベルちゃん、ビビリなのね~」



「サントリナさん!!」



 ビャクヤの街のポーション屋さんは意外といたずら好きだった。

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