第46話 見せられないよ
「ここが依頼を出してた占い屋さんですか?」
「そうだよ。ビャクヤには土地柄、占いの店がたくさんあるんだけど、ここはその中でも当たると評判の店だね」
冒険者ギルドで受けたフェアリークエストをこなすため、アサツキさんの案内で依頼人の占い師さんのお店にやってきた。
お店の周りが紫色の布で覆われた、いかにもな占い屋さんって感じ。
「いやむしろ、高校のオカルト研究部とかが文化祭でやってそうなちょっと誇張した占い屋さんの感じ?」
「入り口でごちゃごちゃうるさいねえ。客かい?」
「あっごめんなさい。あの、依頼を受けて冒険者ギルドから来ました、ベルベルです」
「……ほう。まさかあの妖精退治の依頼を受けてくれる人がいるとはねえ」
「いや、退治とかはまだ」
「こんな所で立ち話しててもしょうがないさね。入んな」
「あ、はい……」
占い師さんはちょっと偏屈そうなおばあさんだった。
うん、こっちもいかにもな感じ。細木○子系ね。
「それじゃあベルベルちゃん、クエストがんばってね」
「えっアサツキさんどっか行っちゃうんですか?」
「ちょっとサントリナにお使いを頼まれててね。サントリナのポーション屋までの道は覚えてる?」
「あ、はい。大丈夫だと思います」
『それじゃあ、日が暮れるまでに帰って来てね』と言ってアサツキさんは白夜の雑踏に消えていった。
「なにやってるんだい。早く入ってきな」
「はーい!」
__ __
「えーというわけで改めまして。依頼を受けて来ました、ベルベルと申します」
「リンデンだ、よろしく頼むよ。今回こそは解決できるかねえ。あまり期待はしてないがね」
もしかしたら、今までにも何度か同じようなことがあったのだろうか。
占い師のリンデンさんは、依頼を受けてやってきたわたしを前にしても、妖精の問題がどうにかなるとはあまり考えてないらしい。
「それで、妖精のせいで水晶が使えないとか」
「ああ、これなんだけどね」
占い屋の真ん中に置いてあるテーブルに、まん丸で綺麗な水晶が置いてある。
「ワシの占い道具の1つ、“彩見の水晶”じゃ」
「もしかして、将来の旦那さんとか見えちゃったり?」
「なにを言うとるんじゃアンタは」
どうやら運命の人とかは見えないらしい。
まあ、さすがにね。
「この水晶で見ることができるのは、色じゃ」
「色、ですか?」
リンデンさんの説明によると、この水晶を覗き込むと、その人に今必要な『色』が見えるらしい。
そして、その色の服だったり、装飾品を身に着けることで運気が上がると。まあ、いわゆるラッキーカラーみたいなものかしら。
「見えた色から、更にどんな服やアイテムを身に着けた方がよいかを他の道具で調べるんじゃが、今はこの水晶が使えんでの。先の占いに進めないんじゃ」
「それで、妖精さんがちょっかいかけてくるっていうのは……」
「まあ、実際に見てみるのが早いじゃろ」
そう言うと、リンデンはわたしの前に水晶を置き、わたしに覗き込むように指示した。
「それじゃあ、魔力を込めるよ……どうだい、なにか見えたかい?」
「うーんと、まだ透明……あっちょっと濁ってき」
「みせられないよー」
「きゃあああああ!?」
わたしが叫んだと同時にリンデンさんが水晶に布を被せる。
「どうだった?」
「な、なんか、ブラクラが……」
「ブラクラってなんじゃ」
「い、いえなんでも」
水晶をずっと覗き込んでたら、透明だった表面に白い煙のようなものが出てきて、これに色が付くのかな? と思った瞬間に水晶の表面いっぱいに黄色い目をしたまっ黒な謎の生き物が現れてなにも見えなくなった。
昔、ネットで間違い探しの動画を見てたらいきなり怖い画像が出てきた時のトラウマが蘇ったわ……
「なんか、真っ黒なやつが現れてほとんど見えなくなりました」
「やはりか。そやつが水晶占いの邪魔をしておる妖精じゃ」
「今の、妖精だったんだ……」
「ベルベルよ、あの妖精をなんとかできるかの?」
「うーん……が、頑張ります……」
こうしてわたしは、水晶に出現するブラクラみたいな妖精をどうにかする事になったのであった。
「あの子の名前は……ウォーリーにしようかしら」
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