第45話 魔女の街の困りごと
「ふんふんふ~ん♪」
「ベルベルちゃんご機嫌だねえ」
「だって~魔女帽子のお店のお兄さんにいっぱい褒められちゃったから~♪」
「アイツは商売人だからさ、誰にでもああやって歯の浮いたセリフを吐くんだよ。ベルベルちゃんもまんまと乗せられて帽子買っちゃうし」
「ぼ、帽子は元々買うつもりでしたもん!」
「無駄に高いの買わされたけどね」
「ぐぬぬ……!」
ま、まあそれはしょうがないのよ。
リップサービス代ということで納得しておこう。
「でも、この魔女帽子とっても可愛いですよ!」
普通よりも少し大きめのツバで、可愛いリボンも付いてて、ちょっとくたびれた感じの焦げ茶色のトンガリ帽子。
うんうん、これで完璧に魔法使いの格好になったわ。一応魔法の杖も手に入れたし。
魔法の杖っていうか、魔法少女のステッキだけど。
「いいかいベルベルちゃん、魔女用品を扱う店に若くて顔立ちの良い男性店員がいるときは、十中八九ターゲット層の魔女を褒めそやして気分よく買い物をしてもらうためなんだ。今回みたいに無駄に高い買い物をする羽目になるんだから気を付けるんだよ」
「はい! 肝に銘じます!」
「大丈夫かなこの子は」
__ __
「さあ着いた。ここがビャクヤの冒険者ギルドだよ」
「ここが……」
お店をいくつか回ってすっかり魔女モードになったわたし。
最後にアサツキさんが案内してくれたのは、ビャクヤの冒険者ギルドだった。
「なんだか、ヘイリオスの冒険者ギルドよりもこじんまりしてるというか、古風な感じですね」
「ビャクヤの街はヘイリオスよりも歴史が古いからね。サンベルク王国の中じゃ一番の老舗ギルドかもしれない」
「へえ……」
大きな切り株をくり抜いて作ったかのような外見の冒険者ギルドは、見ているだけで異世界ファンタジ~って感じでわくわくしてくる。
「お、おじゃましまーす……わ、中は意外と古くない」
「最近リフォームしたらしいよ。流石に歴史ある建物だから色々とガタが来てるんだろうね」
冒険者ギルド、リフォームとかするんだ。
300歳くらい生きてそうなおばあちゃん魔女もいるからバリアフリーにでもしたのかな。
「……魔女の街だから、もっと魔法を使う系のクエストが多いのかなって思ったんですけど、あんまりないですね。ヘイリオスの方が多かったかも」
「そりゃあ魔女の街だからね。魔法で解決できる事は自分でなんとでもなる場合が多いのさ」
「あ、なるほど」
ビャクヤの冒険者ギルドのクエスト掲示板は、意外と肉体労働系や素材集め系の依頼が多かった。
アサツキさんの意見を聞いたら納得だ。
「それじゃあ、妖精関係のクエストなんかはあまり……」
「フェアリークエストはむしろたくさん出てるよ」
「あ、ほんとだ」
掲示板の端に『F』のランクが付けられた依頼書が沢山貼られている。
これは妖精が関わるトラブルや悩みの解決を求めて出された依頼、通称『フェアリークエスト』だ。
「妖精は魔法を見るのが好きな子が多くてね。だからこの街はサンベルク王国の中では妖精の出現率が高いんだけど、その分トラブルも増えてくる、ということさ」
「なるほど……」
これはクエストのやりがいがあるな、と思ってフェアリークエストをいくつか見て回る。
「“妖精のいたずらで鏡が使えない”、“占術用の水晶に妖精がちょっかいかけてきて困ってる”、“水鏡に棲みついた妖精をどうにかして欲しい”……なんか、似たような依頼が多いですね」
「この辺りのは全部最近依頼が出されたものだね。もしかしたら同じ妖精の影響かもしれない」
「じゃあとりあえず1個受けてみようかな。アサツキさん、どれかオススメあります?」
「初めて行った料理屋みたいなノリで聞くね。それなら……この水晶のやつとかでいいんじゃない?」
「占い師さんの依頼ですね。ちなみにその理由は?」
「ベルベルちゃん、占いとか好きそうじゃん」
「ちょっとアサツキさん、そんな『女って占い好きだよな』みたいなスケールで言わないでください」
「じゃあ好きじゃないの?」
「好きですけど」
こうしてわたしは、ビャクヤのフェアリークエストNo.00825『占術用の水晶に妖精がちょっかいかけてきて困ってる』の依頼を受けてみることにしたのだった。
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