第16話 魔物と魔石
「ぱく、もぐもぐ……こ、これは!」
「どうだい?」
「とっても美味しいです!」
「ふふ、お口に合ったようでなにより」
お昼ごはんを食べながらお話ししよう! ということでアサツキさんに案内されてやってきたのは、わたしたちが泊まっている宿屋の近くにある小さな広場……で、営業してるホットサンドのお店。
元々は大きな馬車だったのを、レストランとして利用するためにリフォームされたオシャレな店内は、まるで電車の中でごはんを食べてるみたいでなんだか素敵。
ちなみにわたしが食べているのはチーズたっぷりのホットサンド。濃厚なチーズとじんわり焼けたトマト、そして厚めに切ったハムの相性が最高……
「ここのホットサンドとミートクレープがお気に入りでね。手軽に食べられるし、ボリュームもあって満足度も高い」
「た、たしかに。アサツキさんのやつはすごいボリュームですね……」
アサツキさんが頼んだのは、ミートクレープっていう、薄いクレープ生地とチーズ、そしてひき肉のパティを交互に重ねて積み上げていった、まるでミルクレープとハンバーガーを組み合わせたようなボリュームたっぷりの料理。
「味見してみるかい? はい、あーん」
「えっあの、その……あーん」
うう、は、恥ずかしい……
「もぐ……あ、これも美味しい!」
クレープ生地は甘くないのね。サラダクレープ系って日本でも食べたことなかったからちょっとびっくり。
「あ、それで……さっきのお話しの続きなんですけど」
「ああ、そうだね。それじゃあちょっと説明しようかな」
たしか、魔物がいなくなるとこの世界『ネオテイル』が衰退しちゃうって話だった。
「ベルベルちゃんは、魔物がどこから来るか知っているかい?」
「いえ、分かりません。魔物が住んでる魔界……みたいな場所があるとか?」
「お、いい線いってるね。この世界……サンベルク王国からだと北東方面かな。まあとにかく、そこに『エビルゾーン』と呼ばれている大穴があってね、魔物はそこからやって来るんだ」
「エビルゾーン……」
「エビルゾーンの最深部にいると言われている魔王アヴェスを倒し、エビルゾーン自体を封印すれば魔物は現れなくなる。これが魔物討伐を掲げる国の考えというか、最終目標だね」
そのために強力なスキルをもった勇者候補を育てているというわけね。魔物を倒し、エビルゾーンへ行って魔王と戦うために。
「まあ、実際にはそのエビルゾーンの近くにある『サタニランド帝国』っていう魔王信仰の国が反発してたりで、簡単にはいかないだろうけど」
「そんな国もあるんですね」
「とにかく、そのエビルゾーンから現れる魔物なんだけど、アイツらはこの世界に元々いるボクたち人間族や動物とは構造が違っていてね。倒すと肉体が消滅して、かわりに魔力の結晶……魔石になるんだ」
「魔物を倒すと魔石に……」
「魔石はボクたちの生活にはかかせない魔力エネルギーとなっているからね。一部の山や洞窟なんかでは自然生成された魔石が採れるけど、魔物を倒した方が手っ取り早い」
「じゃあ、もし魔物がいなくなっちゃうと、魔石不足になってしまうってことですか?」
「その通り。ベルベルちゃんは理解が早くて助かるよ。ウラハイル聖国の奴らはなんでこれが分かんないのかなあ」
「あはは……」
女神様信仰が強い人にとっては、敵であるはずの魔物と持ちつ持たれつみたいな感じが許せないのかもしれない。
「というわけで、ボクは勇者候補を抜けて、というか追い出され、今はその日暮らしの旅の魔女ってことさ」
「アサツキさんも色々あったんですね」
「まあ、今の生活には満足しているよ。定期的にクエストをこなして日銭を稼がないといけないけどね……あ、せっかくだしこの後一緒に行ってみるかい?」
「どこへですか?」
「冒険者ギルドさ」
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