第20話 妖精言葉は難しい



「えっと、座敷わらしちゃん、わたしと一緒に遊びましょ……」



「おまえをころす」



「ええ……」



 ニコニコ笑顔でとても物騒なことを言ってくる座敷わらしちゃん。

え、なに……遊ぶってそういう感じ? めちゃくちゃ強い幼女が使用人をボコボコにして『またおもちゃ壊れちゃった~』って言うヤツ?

それは漫画の中だけにしてほしいわ。



「おまえ、ころころす」



「ん……? ころころ……?」



 フェアリーテレパスのスキルが発動しているはずなんだけど、座敷わらしちゃんの言葉はちょっと理解するのが大変だ。

さっきまで分かりやすいとか言ってたの、あれ訂正するわ。



「ころころってなにかしら?」



「くるくるす」



「どっちよ」



 どうやら『ころころ』とか『くるくる』する何かで遊びたいらしい。正式名称は本人も知らないみたいだ。



「ころころ……サイコロとか? この世界にあるのかしら」



 くるくるだとなんだろう。コマとか、公園にある回る遊具みたいな何かかしら……



「3、2、1、ゴーシュート! ってやつ?」



「のーくるくる」



 違ったらしい。どうやらベイブ〇ードではないみたいね。じゃあびゅんびゅんゴマとか?

丸とか四角に切った紙に、糸を通してビュンビュン引っ張るやつ。



「びゅんびゅんゴマなら、糸と丈夫な紙があれば作れるけど……」



「びゅんびゅん?」



 あ、これも多分違うな。ちょっと興味ありそうだけど。



「びゅんびゅんゴマ、やってみる?」



「ぐるぐる!」



「ふふ、それじゃあ、ちょっと材料を集めてくるわね」



 うーん、わたしのスキルもまだ完璧ではないのか、妖精さんが言ったことが翻訳されて伝わることもあるし、ほとんどそのまま伝わることもあるみたい。

まあでも、幼い子供と接していると思えばなにを考えているのか意外と分かるかも。



「マスターさん、お店に丈夫な紙と糸、あとは紙に穴を開けられる針のようなものはありませんか? あったら少し頂きたいんですが……」



「ふむ、糸と針ならあるぞ。紙は注文用紙に使ってる薄いものしかないのう。街の中心部にある雑貨屋なら厚紙も置いてるはずじゃが」



「厚紙って、結構お値段しますか?」



「いんや、10枚で200エルとかそんなもんじゃ」



「あ、じゃあちょっと買ってきます」



「あまり遅くならんようにの」



「はーい」



 待っててね座敷わらしちゃん! わたしがワ〇ワクさん仕込み(テレビで視ただけ)の最強びゅんびゅんゴマを作ってあげるから!



「そういえば、雑貨屋ってどこかしら?」



 ……。



 …………。



「よし、なんとか厚紙を買えたわ」



 マスターさんに書いてもらった雑貨屋までの地図を頼りになんとかお店にたどり着いて、残り数セットしか売ってなかった厚紙を無事に購入。

厚紙、そんなに人気なのかしら。



「それにしても、この世界はお店が閉まる時間がかなり早いわね。それとも国によって違うのかしら?」



 雑貨屋さんにたどり着いたとき、まだ夕方だというのに閉店間際だった。

酒場のような一部のお店以外は、結構夕方くらいの時間に閉めてしまうらしい。ある意味とっても健全ね。



「あ、そうだわ。宿屋に戻る前にコロポックルで夕ご飯を食べようかしら。あーでもでも、マスターさんの料理も半額で食べられるし……」



 そんなことを考えながら歩いていたら、前から歩いてきた人にドンッと肩がぶつかってしまう。



「あっごめんなさい……」



「いや、こちらこそすまん……あれ? お前……」



「どうしたのヒカル君。……あっ君は」



「えっ? あ……」



 ぶつかった相手は、わたしの知り合いだった。知り合いというか、1度見たことある顔というか。



「謁見の間で会った、勇者候補の……」



 たしか、剣と光魔法が使えるヒカルくんと、攻撃も出来る鉄壁ガードのマモルくん……ヒカルとマモル……剣と盾……



「ヒカマモ……」



「「その呼び方はやめてくれ」」

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