第30話 白馬の首なし王子様
デュラハン。
アイルランドに伝わる妖精で、ヘッドレス・ホースマン(首無しの騎乗者)や、首無しの御者とも呼ばれる。頭部のない男性の胴体の姿で、生きたように馬に乗り、自分の生首を胸元に抱えているタイプもいる。以上、ベルペディアさんでした。
「わたしが知ってるのは、首なしの黒い馬に乗る首なしの騎士様なんだけど……」
「あれは馬に乗ってるんじゃなくて馬と合体してるよ。やっぱりケンタウロスじゃないか?」
「うーん、でもなんとなく妖精さんって感じのオーラが出てる気がして」
「そうかい? まあ、妖精とコミュニケーションを取れるスキル持ちのベルベルちゃんが言うならそうなのかもしれないね」
白馬のデュラハンさんは、無言のまま遠くからこちらをじっと見つめるだけで、逃げたり襲いかかってきたりもしない。
「ど、どうしましょう。あそこを通らないと帰れないんですよね?」
「近づいて行っても平気だろうか……ベルベルちゃん、ちょっと話してみてよ」
「え、ええっ? なんて言えばいいんですか?」
「そうだねえ、『良い鎧ですね、良かったらヘイリオスまで乗せてくれませんか?』とか」
「なんでヒッチハイクしようとしてるみたいになってるんですか!」
と、そんなことをアサツキさんと話していたらいつの間にかデュラハンはいなくなっていた。
「おや、運よくどこかへ去ってくれたようだ。さあベルベルちゃん、今のうちに王都に帰ろう」
「そ、そうですね」
歩く音が全然しなかったわ……やっぱりアンデッド系の魔物だったのかしら。それにしても、白馬の首なし騎士様か……
「ちょっと、かっこよかったかも」
「ベルベルちゃん、ああいうケンタウロスみたいなのがタイプ? 変わってるね」
「ちちち、違いますよ!」
「でもボクは良いと思うよ。多様性の時代だし」
「だから違うって言ってるじゃないですか~!」
てか異世界も多様性とか気にしてるのね。
__ __
「はい、確かにクエスト依頼の達成を確認いたしました。こちら報酬の8500エルです」
「ありがとうございます!」
漁業ギルドの人から依頼達成の魔証印を貰って、冒険者ギルドで報酬を受け取る。
フェアリークエストのときは妖精さんと遊んだりしてちょっと楽しかったけど、今回はかなり大変だった。
苦労して手に入れたお金だもん、大切に使わなきゃ。
「あっそうだ、アサツキさんの分をわけなきゃ」
「ボクはいいよ、勝手に付き添っただけだし、魔石もこんなに手に入ったしね」
「それは良くないですよ! 一緒にやってくれたんだから報酬も山分けです!」
「そうかい? まあベルベルちゃんがそこまで言うなら。でもメインはベルベルちゃんだからね」
そんなわけで、わたしが5500エル、アサツキさんが3000エルの報酬を山分け。
「それじゃあベルベルちゃん、ごはんでも食べにいこうか」
「あっいいですね~。わたしもうお腹ペコペコです」
「よし、それじゃあコロポックルにでも行こうか。ボクが奢ってあげよう」
「だっダメですよ! それじゃあ報酬山分けの意味ないじゃないですか!」
そんな感じでアサツキさんとわちゃわちゃしていた時だった。
カンカンカンカン!!
「きっ緊急クエスト! 緊急クエストが発生しました!」
「えっ? な、なに?」
「王都の西門方面から暴走した魔物の群れが近づいてきています! 冒険者の方は積極的に参加をお願いします!」
「ま、魔物の群れ……!?」
「あー、たまにあるんだよね。魔物の種類によって凶暴になる時期があるんだよ」
「アサツキさんなんでそんなに冷静なんですか!?」
「えー? まあこういうのって群れで生活する系のそんなに強い魔物じゃないからさ、結構お金も稼げるし低ランクの冒険者がこぞって参加して」
「暴走している魔物はクエストBランク相当、“レッサードラゴン”の大群です! 高ランクの方、積極的に参加をお願いします! ……あっそこにいるのはAランク冒険者のアサツキさんじゃないですか! 是非とも参加をお願いしまーす!!」
「…………」
「アサツキさん、頑張ってくださいね」
「あっベルベルさんもアサツキさんと共同参加すればEランクでも参加できますよ! ダックフロッグを倒したその手腕を我々にお貸しください!」
「…………」
「それじゃあベルベルちゃん、西門に向かおうか」
「う、噓でしょ……Bランクなんて無理ですよ!」
「大丈夫大丈夫。もうひと頑張りだよベルベルちゃん」
「いやだああああああああ!!」
うう、わたしのごはんタイムが……
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