第55話 魔法犯罪者を捕まえよう!
「それで、その魔法犯罪者っていうのはなんなんですか?」
「なんだかんだで協力してくれるベルベルちゃん、ボクは好きだよ」
「言わないでください」
そう、結局わたしはアサツキさんが持ってきたクエスト『魔法犯罪者の確保』を受けることに。
強くお願いされると断れないのよね、芯が日本人だから。
「魔物使いのウルーソという男だ。罪状は『登録外の使役魔法の使用』」
「魔物使い? 使役魔法?」
「基本的に魔物というのは討伐対象ではあるんだけど、一部の国や地域では魔物を使役して、日々の生活や戦いに利用したりしている。そこで、魔物を操るために必要なのが使役魔法さ」
使役魔法には種類があり、それらは確実かつ安全に魔物を使役できるもので、長年魔法使いたちによって研究され、完成された使役魔法のみが国ごとに登録されて使用可能になっているらしい。
登録されていない使役魔法は、魔物が出現する『エビルゾーン』の近くにある一部の研究エリア内でだけ使用が可能だとか。
「不安定な使役魔法を使用して、街中で魔法が解除されて魔物が暴走……なんてことを起こさないようにね。使用者も、使役魔法をちゃんと修得した者にのみ許可が下りる」
「使っていい使役魔法でも、素人が試しに……とかはダメなんですね」
「その通り。で、今回犯罪者として逃亡中のウルーソは、登録済みの使役魔法の許可は下りている、正真正銘の魔物使い……ではあるんだけど、自分で開発した未登録の使役魔法を使って魔物が暴走してしまい、他の街でかなりの被害を出している」
「な、なんでそんなことを……」
普通に登録済みの安全な使役魔法を使えばいいのに。
それだとなにか問題があるのかしら。
「ベルベルちゃんは、魔物の強さにランクがあるのはなんとなく理解してる?」
「まあ、そうですね。冒険者ギルドの討伐クエストでも強い魔物は高ランクのクエストですし」
「そうだね。そして、安全に使用できる使役魔法の対象となる魔物も同じなんだ。基本的には高ランクの魔物は使役出来ない」
強い魔物であればあるほど、安全に使役するのが難しい。
使役魔法の効果も効かなくなるし、使役できる時間も短くなるからだ。
「そこでウルーソは、強い魔物を使役するために、現在登録されている使役魔法よりも強力な使役効果が出る魔法を開発したんだ」
「その魔法は、国に申請したりしなかったんですか?」
「一度申請したけど、却下されたらしい。使役効果は魔物の種族によっても効いたり効かなかったりで、安定性に欠ける。今の段階ではまだ普通に使える代物ではなかったとのことだ」
そんな状態にもかかわらず、ウルーソは研究エリア外に出てその使役魔法を使用してしまう。
最初は上手くいったみたいだが、近くの街を訪れた所で魔法の効果が無効化され、使役していた強い魔物が暴走して周りに被害が出てしまい、お尋ね者に……とのことらしい。
「捕まえた人に賞金も出るから、結構狙ってる冒険者もいるらしいんだけど、今でも逃亡しながら強い魔物を使役してそいつらを返り討ちにしているんだってさ」
「そ、そんなやばい人、わたしには手に負えませんよ……!」
「大丈夫大丈夫。使役してる魔物をどうにかできれば、本人はそんなでもないから」
わたし達の他にも依頼を受けて探している冒険者が沢山いるので、まあその中の誰かが捕まえてくれれば……という感じらしい。ゆる募ってやつかしら。
「それじゃあ、まずはどこに潜伏してるのか調べないとですね」
「そこなんだよねえ。ベルベルちゃん、そこの泉で占いでもやって探してくれない?」
さっきまでウォーリーちゃんとお話ししていた泉を指さすアサツキさん。
「あはは、そんなんで分かるわけないじゃないですか」
わたしは笑いながら泉の縁に腰かけ、水面を覗き込む。
「泉さん泉さん、ウルーソの居場所を教えてくださーい。なんちゃって」
…………。
「ほらアサツキさん、何も反応が」
ブクブクブク……
「……ん?」
バッシャアアアアン!!
「西の森やね」
「きゃあああああああ!?」
泉から謎の喋る魚が飛び出してきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます