雨のプラネタリウム

車のスピーカーからはクリアな歌声が響いてる


ひとりになったこの閉じられた世界を

あなたが居なくなった空間を

音が遮るものもなく満たしてゆく


目を閉じると微かに

まだ今朝のシャンプーの匂いがするのに

それがいつもそこにあった気配の不在を

実感をもって耳鳴りに変える


上げたヴォリュームで雨音と一緒に掻き消して

そのままゆっくりと倒れ込むようにシートに身を沈めたら

頬を伝う後悔がペタペタと不快で

拭った指先が白くなるくらいキツくハンドルを握り直した


額をコツリと手の間に埋める

雨粒がポタポタと足下に落ちる

ゆっくりと曲が切り替わる


雨は止まない


白く曇ったフロントガラスに目をやると

流れ星みたいに

たまった雨粒が転がり落ちて行った


あぁ、どうか


この雨が止みませんように


今ひととき


こうしてひとりで


いられますように

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