シート

いったい何が変わったって言うんだろう


助手席に座るキミはこちらを見ようともしない


夏にはふたり


窓を思いっきり開けて


はしゃぎながらドライブしたこの車の助手席で


キミは


母親に手をひかれながら

こちらを不思議そうに振り返るあの小さな女の子よりも無関心にそこにいる


ぽつりぽつりとキミに投げ掛けた言葉がたったのこの手渡しすらも出来そうなこの距離ですら届かない


シートベルトをスルスルと外して

キミは何かを言ってドアを閉めた


ああ、やっぱり


助手席すらも離れたキミの言葉なんて


ぼくの心には届かない


シートベルトに押さえられたぼくの胸は一層苦しくなる


ハンドルに寄りかかった手はまるで固まってしまったように関節を軋ませる


ふたり知り合えば


想いは深まると思ってた


たくさんの景色を一緒に見ることで


ひとつになれると信じてた


すっかり白くなった両手をハンドルから離し


目を閉じて額を上げた


「これからもそこにいて欲しかっただけなのに」

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