忘れ物

探し物をして押し入れの中に潜り込んでいたら埃っぽいダンボール箱が出てきた


ちょうど疲れてきたところ


ひと息つくついでに箱の中を覗いてみた


中は意外と整理されていて、卒業アルバムや国語の教科書、当時使ってた筆記用具とかがぴったりと収まってる


どうやら高校時代の物らしいそれらを指でなぞっているとひとつのノートの上で指が止まった


まるで本屋に行って不意に昔探していた本を見つけたような

そんな感じだった


ゆっくりとそのノートを引き出す


1ページ、また1ページとめくるとそこにあった


ノートの端っこ


あの日の自分の気持ちの一部が


たった一言


誰に伝えるでもなく


でも確かにその時あった気持ちが

こんな古ぼけたノートの間に挟まってた


なんだかそれが切なくて


過ぎた時間がさみしいような


あの時間が恋しいような


そして


あの時の自分が愛おしかった


いっぱい失敗して


思い出す度、思わず叫び出したくなるようなこともたくさんあって


消えてしまいたいとベッドの上で膝を抱えた夜もいくつもあった


ひとりでよく行った学校の上の公園


深夜、ラジオに耳を傾けながらデスクライトに照らされた問題集とか


いろんな事がとめどなく溢れてくる


それをそっと


こぼさないように


流れていってしまわないように


胸にきつく抱き締めた


またいつか


あの日の自分に会えますようにと

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