春風

夜、街中を流れる川沿いの桜並木をぶらぶらと歩いた


近くを走る国道からは時折車が走り去る音が聴こえて


等間隔に並んだ街灯がまばらに行き交う人のシルエットを浮かび上がらせていた


ふと足を止めて散り始めたさくらを見上げると


やわらかな春の風が身体を通り抜けていった


あれから何年経ったんだろう?


いくつ季節を見送って


いろんな事が変わっていって


でも


さっき自分の中を通り抜けて行った風は


間違いなくあの時と同じ風だった


あの時と同じ


やわらかいけど少し冷たくて


心の中の大切な何かをすくって持って行ってしまう


そんな


優しいのに


さびしい感触

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る