ラーメン

足を引きずるようにして歩く帰り道

最寄りの駅を降りて

徒歩10分の自宅アパートまで


1日中立ったり座ったりで

足の裏やかかとはすっかり痛くなって

何も考えたくないくらいに疲れてるのを感じた


家に帰って化粧を落としてお風呂に入って

そんなこまごまとしたことすら億劫で

玄関でそのまま眠ってしまいたかった


そんな風にぼんやり歩いてると

ふと道端の小さなラーメン屋さんが目に入った


そう言えば昔彼とよく立ち寄ったな

とか考えていると自然と足がそちらに向く


変わらない昔ながらの古い色褪せた店内

カウンター越しに立つ大将

高い所に設置された小さなテレビからは

ナイター中継が流れてた


頼んだラーメンは直ぐに出てきて

スープを一口すすると不意に

どうしようもなく懐かしさが込み上げてくる


よくこのカウンターに座ってふたりでラーメン食べたなとか

私のアパートに来る前なのに彼がラーメンににんにくを入れようとするからケンカしたり


なんでもない

どうしようもなく下らない

あんなことやこんなことがとめどなく溢れてきて

涙がこぼれた


あわてて袖で涙を拭って

にんにく絞りを手に取った


今日の一杯は

何度も食べた記憶の中のどのラーメンより少ししょっぱくて

でも

胸がじんわり温まる


そんな一杯だった




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