宝物

宝物のように

いつも心の中にあったものを手に取ってみると

いつの間にか随分と色褪せてしまっていて

今にしてよく見ると

なんだかツマラナイ ガラクタに見える

なんだかがっかりして それを部屋の隅に放り投げた


朝になって

また日常が始まって

でも

それから何をしていても

どうしてもそれが気になって

家に帰ると着替えもせずにそれを少しホコリっぽい

ちっぽけな部屋の床から拾い上げた


例えば子どもの時

親にどうしてもとねだって買ってもらったおもちゃや

初恋の人が書いてくれた卒業アルバムの寄せ書き

初めて出来た恋人とふたりで選んだキーホルダーに

お金を貯めて買った高いコート


やっぱりツマラナイけれど

他人から見たらきっとガラクタだけど

その時その時の自分にとっては最高の宝物で

それを大切にしていた頃の自分がどうしようもなく

涙が出るくらいに愛おしかった


その時の自分にはもう戻れないし

会うことだって出来ないけれど

そんな自分が大切にしていた宝物は

それを大切にしていた想いは

こうして抱き締めることが出来るから


今の自分は何を大切にしているんだろう


これからの自分は何を大切にするんだろう


そう思いながら

また次の時まで


宝物をそっと仕舞い込んだ




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る