あの日


雨の中で思いっきり泣いた


さっきまであなたが差してくれていた傘が遠ざかってく


それを見送るわたしはその場に崩れた


泣いて泣いて


頬を伝うのが雨なのか涙なのかも分からないくらい


すべてを洗い流すように


春の冷たい雨が


桜とわたしの身体を濡らしていく


気持ち良かった


なにもかも失って


惨めに泣き崩れて


ずぶ濡れになって


でも


本当に久しぶりに


子どもの時みたいにすべてを吐き出して泣いた




家に帰ると玄関で水の溜まった靴


ずぶ濡れの服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びた


冷えた身体にシャワーが温かくって


「あぁ、生きてるんだ」って泣いた


やっと少し


悲しかった

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