第11話

「コ、ハル?」

「はい、僕です」

「どう…」

「どうして、なんて後ですよ」

「……ええ」

私はコハルの手を取る。その手は暖かく、何故か安心できた。

「後ろに居るあの化け物を殺さなきゃいけない」

「マナさえ回復すれば、私が」

「なら、簡単ですね」



「ソフィア様がもう一人いれば勝てるって事ですよね」

コハルの言葉に困惑していると、コハルは笑った。

「僕の配下になって下さい、ソフィア様」

「頼って下さい、信じて下さい。僕がソフィア様を助けます」

コハルは自信満々に、そう言った。

「……なら、お願い」

「はい、任せて下さい!」

そう言ってコハルは迫ってくるバルトラムへと向かって行った。





力が漲るのを感じる。これがマナなんだと感動すると同時に自分の力だと瞬時に理解した。

『覚悟はありますか、コハル様』

「魔法なんて初めてだから、頼りにしてるよ。ゼラ」

『了解です、コハル様』

『指示しますので、言う通りに動いてください』

「オッケー頑張る」

そう決心し僕は迫ってくるバルトラムに相対する。

生まれて初めて、人と本気で戦う。



ゲームなんかじゃない、死が隣り合わせにある感覚。

怖い、でもやるしかない。

(もう決めたんだ)

『炎の魔法で剣を作り、後ろに下がって攻撃を回避してください』

「了解!」



「【欲望の瓶の上に腰かリリスける者】」

「あつ…くない!」

指示に従い剣を作り、振りかぶった爪を避ける。

『後ろ脚の爪で攻撃してきます、しゃがんで回避してください』

「あぶな!」

後ろ脚の回し蹴りゼラの指示もあり何とか避けられた。すぐさまバルトラムに切りかかる。



『次は風の魔法です!上に大きく飛んで下さい』

「了解!」

ゼラに言われるがまま、ジャンプし風の魔法で飛ぶ。

『次はコハル様の右手から大きな炎を作りバルトラムに投げてください』

「こう?」

指示通り火球を放つ。しかしそれは簡単に避けられてしまう。

『風の魔法で滞空しつつ、もう一度、今度は数を増やし火球を放って下さい』

もう一度作る、今度は大きくして飛ばすのではなく、小さく圧縮した特大の火球だ。それを連続で放つ。

数発は避けれたが一発が直撃する。火球は背中を燃やし、バルトラムが苦悶の声を上げる。

「ぐあああああああああ!」



するとバルトラムの体から辺り一帯を埋め尽くすほどの蠅が飛び出した。

『あの蠅はマナを喰らうようです。炎の魔法を体全体纏わせ、一気に放出。視界を確保し現状を把握します』

僕は体に炎を纏い放出する。蠅が燃え尽き視界が少し開く。

するとそこにはその巨大な爪を振りかぶった、バルトラムが居た。

「まずっ」

『避けて下さい!コハル様!』

間に合わない、そう悟った。

だが振り払った爪は氷の波に押され空を切った。



「ソフィア様!」

「任せっきりなんて、性に合わないから」

『ソファアのマナの回復状況をご確認お願いします』

「マナは回復してますか?」

「後大きいの一発でからっけつ!」

『なら、私達が隙を作りましょう』

バルトラムがこちらに向かい走ってくる。その動きは速く避けるのは無理だと察する。

『氷の壁を目の前に作りましょう、その後に壁が砕かれたら最大限の氷魔法で拘束を』



僕はゼラの指示通り動く。

氷の壁は簡単に破壊される。しかし、その一瞬があれば十分だ。

「【欲望の瓶の上に腰かリリスける者】」

氷の壁で一瞬だけ動きを止めた隙に、一気に大量のマナを溜めて氷の魔法を放つ。

一瞬にして周囲が凍りつく。そしてそれはバルトラムも例外ではない。

だがその巨体は氷漬けになってもなお動きを止めようとしない。

「でも、これでチェックメイトね」



ソフィア様が最大威力の火球を作り出す。

そして火球と風を纏った炎が合わさり威力が増す。

「喰らいなさい」

バルトラムは巨大な火球により塵も残さず消えた。

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