第4話

「おはよー!」

「……おはようございます」

アイシャさんが元気よく挨拶をしてくる。僕もそれに返す。

それにしても眠い。ヘイゼラ、今何時?

『朝の五時です』

後二時間は寝ていたいな。

眠たい体を無理やり起こし、服を整える。

「コハルちゃん、朝ごはん食べに行くよ」

「はい、今行きます」

そうして僕はアイシャさんに連れられ食堂に向かった。





食堂に着くとすでにウルさんとセイラさんが座っていた。

「おはよう!」

「ああ、おはよう」

「おう」

アイシャさんとセイラさんが元気よく挨拶をする。

ウルさんも返事を返す。

「来るのが遅い。そんなんじゃ仕事に遅れるぞ」

「先輩風をふかすなのじゃ。お前もつい最近まで起きれんかったじゃろ」

「……良いだろぉ、ちょっと位仕事のできる先輩風ふかしてもよぉ」

「……分かったから涙目になってこっちを見んでくれ」

ウルさんがセイラさんに泣きつく。



「二人とも、コハルちゃんの前でそんな見っとも無い事しないの」

アイシャさんはそう言うと、僕の手を引いて席に着かせた。

「今日も朝ごはんはパンとサラダにスープね!」

パンにサラダ、コンソメスープだ。

それらを平らげると、仕事の時間になる。

「コハルちゃんは、まず屋敷の掃除から始めよっか」

そう言ってアイシャさんと僕は屋敷の中の掃除を始めた。

やる事はそう難しくないのですぐに慣れる。

そうして一二時間ほど掃除を続けると、旦那様方の朝食を用意し朝が終わる。





昼も同じように旦那様方の食事を用意する。

食事を見ていて分かるのは、旦那様と奥様の会話はあるが。ソフィア様との会話はあまりない。

というか、ソフィア様が会話を切っている。

そして食事が終わると、アイシャさんに仕事を教えてもらう。

「そうだ、セイラと買い出しに行って来て」

「買い出し」

「うん、食材の買い出し。セイラが案内してくれるから」

「分かりました」

そうして僕はセイラさんと一緒に街へ買い出しに行くことになった。





そうしてセイラさんと街への道を歩いていると。

「コハルよ、お前さんはここの辺りについて詳しいか?」

「あ、いや。まだ来たばかりで」

「そうか」

「コハルよ、お前は今までどうやって生きてきたんじゃ?」

そう聞かれて、言葉が思いつかず言葉が途切れる。

「教えたくないなら、深くは聞かんが。ウルの鼻は正確じゃ、お前さん処女なのか?」

「しょ、え?あ、あの……」

急にそう聞かれてついつい赤面してしまう。

「ウブじゃの~、本当に淫魔か?」



「まあよい。変わり者なんてあの屋敷にごろごろ居る」

変わり者?まあ奥様は変わり者だし、ソフィア様もあの性格だし。

「街まである、少し話さんか」

「あ、はい」

「アイシャはお嬢様を尊敬しておるじゃろ」

「まあ、確かに」

「アイシャはお嬢様に助けられたんじゃ」

「そう、なんですか」

「あの子はハーフエルフでな、村を追われ違法の奴隷商人に捕まりそうになっとった」


『ハーフエルフ、エルフにとっては忌むべき存在であり、珍しい人種なので奴隷としての価値も高いようです』

なるほど、ゼラペディア助かる~。



「お嬢様が彼女を助けたのですか?」

「ああ、お嬢様はそいつらを一掃した」

驚きと尊敬の念が胸に込み上げる。

「ワシも驚いた、生まれてたかだか十年の少女が血塗れで帰って来た時は」

「殺したんですか……?」

セイラさんの言葉に戸惑いが深まる。十歳という若さで、人殺しを経験したというのだ。



「ああ、お嬢様はまだ幼かった。でもその時の決意は凄まじく、その目は極度のまでに冷たかった」

「その時にお嬢様がアイシャを連れて帰ってきた」

「助けてもらった恩を返すためアイシャはここで働いておる」

「……何と言えば」



「……そうじゃな。まあお前さんに話す事でもなかったか」

「いや、もっと皆さんの事が知りたいので。ありがとうございます」

「そうか。まあ、そんな話はさておき、買い出しじゃ」

セイラさんは話題を変え、再び街の方へと歩き始めた。

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