第32話
「コハル、第2ラウンド行くわよ!」
「はい!」
始まりを告げると同時に待機させていた剣を降り注ぐ。
だがそれはジェシーの鎧を貫通しない。
「インファイトするから、援護して」
とソフィア様は平然と言う。
ステージに着地すると同時にジェシーに向かって駆けた。
それに反応するかのように、ジェシーも肉薄する。
ジェシーの騎槍による突きを紙一重で躱すと即座に騎槍の周りを凍らし動きを止める。
それに対し騎槍を手放し丸盾で守りを固める。
ソフィア様はその一瞬を逃さずに、氷塊の物量で盾のガードを剥がす。
そして放した丸盾を足場にし、丸腰のジェシーに魔法を放つ。
「最大火力……行くわよ」
ソフィア様の手から放たれる魔力が風と炎を纏い、まるで竜巻のようになりジェシーへ迫る。
それに対しジェシーの口が動いた……。だが間に合わなかったのか竜巻は直撃する。
「凄い……」
僕の援護なんていらないくらいソフィア様はジェシーを圧倒していた。
(ていうか、狙いが定まらなくて援護どころじゃなかった)
炎の中から、鎧を無くしその体をあちこちを溶かしながらジェシーがはい出てくる。
(本当に……力を取り戻しているのですね、ラヴィア様……)
(動けなかった……ですが、このまま貴方の思い通りにはさせません)
『コハル様、ソフィアと同じく接近戦に移りましょう』
ゼラの指示通り、近接戦へと持ち込むため走る。
「【織糸:不朽の不全】」
それすら読んでいた様にジェシーの口から言葉が流れる。
現れた糸玉から瞬間、【緋糸】が次々飛んでくる。
咄嗟に氷の壁で守りを固める。
動けない、近づけない……止めを刺し行かないと。
ソフィア様も同じ対処を取り、動けない様子だ。
「【織糸:不全完成】」
ジェシーは悠々と言葉を発し、糸が彼女を包んだ。
糸が無くなれば、溶かした部分が再生していた。
「【賛美曲】カノン」
氷の壁の横から光線を通しジェシーにぶつける。
大して効果はないようだが、ジェシーこちらに視線を向ける。
糸玉から緋糸が止むと同時にジェシーが何かを呟いた。
「【槍会】」
すると、ステージがうごめき。
作り出された槍が僕達を狙い始める。
地面から生えてくる槍は止まらず、次々と襲ってくる。
「【風雷混合 我矢】」
ソフィア様がそう呟くと弓を形どった風が現れ雷の矢を引き絞る。
動き回りながらジェシーに狙いを定めて矢を放った。
それに続いて僕も魔法を発動させる。
「【縁炎】」
僕が右手で円を描き、その軌跡に炎があふれ出す。
それを捉えるとジェシーに放つ。
飛来する槍を避けながら、次々と。
『ジェシー……そろそろだ。返してもらおうか私の体を』
(ラヴィア様め、動けない……こんなにも長い事縛れるとは)
『今が攻め時です、行きましょう!』
ソフィア様の雷の矢が閃光となってジェシーに迫り、僕の【縁炎】も火の輪を描きながらジェシーに襲いかかる。
彼女はその場から動かず、魔法の障壁を駆使して攻撃を防いでいるが、少しずつ余裕がなくなっているのが見て取れた。
僕はゼラの指示に従い、攻撃の手を緩めずに前進する。足元から次々と現れる槍を何とか回避し、ジェシーに一気に距離を詰める。横目で見ると、ソフィア様も同時にジェシーに接近し、氷の刃を準備している。
(ここで、貴方の希望を潰します)
ジェシーは両手を僕達の方に向ける。
「【不全真珠】」
両手に紫色の球体が姿を現す。
だが……それは溶けるように消えていった。
その隙は見逃せない。すかさず魔法を発動させる。
氷塊と炎の刃が、ジェシーの胴体を貫き燃やしていく。
「せめ……て、貴方、もろ……とも」
次の瞬間、ジェシーの人形の体が割れる。
まるで掲げるように中から少女が現れる。
「!!」
だが勢いは止まらない。
次に放った魔法は少女に直撃しようとしていた。
「馬鹿者め……」
ニヤリと少女が笑うと同時に目を開ける。
瞬間、僕達の放った魔法が止まった。そしてその手を振るうと魔法が散乱する。
「ふふ、あははははっ!いやはや何十何百年ぶりだろうか。目覚めの時に日の光が無いのは残念だが、それでも最高の気分だな」
少女が勝利を確信したかのように大笑いをする。
「ラヴィアさん……?」
「おお、コハルか。いやあよくやった。本当にな」
ラヴィアさんは拘束具を破壊すると、すぐにジェシーの上に立った。
「貴方が人形の魔女、ラヴィアね」
ソフィア様が警戒を解かずラヴィアさんに話しかける。
「ああそうだ。小娘も礼を言っておくぞ」
(どうすればいい?敵か判別がつかない。でも、それでも私の全細胞が言っている。こいつは危険だと)
「コハルよ、少しちこう寄れ」
そういうとラヴィアさんは糸で何かを手繰り寄せた……それはジェシーに切り飛ばされた左手首だ。
「直してやる、はようよれ」
「え……ああ……はい」
ラヴィアさんにより傷口を差し出すと、糸が切断面をつなげていく。
「ラヴィアさん、貴方はジェシーから出ると死んじゃうんじゃ」
「ああ、あれか……」
糸でつながれ、左腕は元通りになりその感触を確かめていた。
「嘘だ、何一つお前に真実など言っていない」
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