第31話
(……ゼラ、サポートお願いだよ)
『了解です【賛美曲】を使い、相手の出方を伺いましょう』
「【賛美曲】」
そう唱えると、僕の後方に左後ろ上辺りに光り輝く魔法陣が浮かび上がる。
拳銃のジェスチャーを人形に向け「カノン」と呟く。
魔法陣から光線が、一瞬の閃光を伴い人形に向かって飛んでいく。
人形はそれに対し手をかざし僕の【賛美曲】を真っ向から受ける気だ。
「【織糸】」
ノイズではない声が聞こえると、格子状の糸が人形を守るように現れる。
光線を糸は吸取り、僕の【賛美曲】は無力化された。
すると、人形は手のひらを見つめ、少し上の空のような表情を浮かべていた。
「よそ見?随分余裕なのね」
「【晩嵐】」
ソフィア様が人形に向かって黒い嵐を繰り出す。
人形は随分と余裕そうだった。
向かってくる嵐を避けるとまた声が聞こえる。
「
その魔法が唱えられた瞬間、穴が開きそこから炎を纏った小さい人形が出てくる。
その数、数十。
「な、なにこれ」
ソフィア様が驚きの声を上げる。僕だって同じ気持ちだ。
困惑している所にさらに声が聞こえる。
「【織糸:戯剣】」
人形の手のひらから、糸が伸びる。
その糸は剣の形を模る。
(どうする……ゼラ、ラヴィアさんのスキルは使えないの?)
『使えますが、おすすめはしません。これは使用者によって効力の変わるスキルです』(どういう事?)
『このスキルは人形を作り出すスキルの様ですが……私にはどんな人形ができるか分かりません』
『コハル様に危害を加えないという確証がありません。ですので、別のスキルの方が良いかと思います』
(具体的に……どうすれば良いと思う?)
『ソフィアと協力し氷魔法で、広範囲を制圧するのをお勧めします』
ゼラの回答を聞き、ソフィア様に伝えようとしたが。
ソフィア様は既に氷魔法を発動し、人形たちを次々と凍らせていた。
氷の結晶が空中で舞い、人形たちの動きを封じ込めるかのように包み込んでいく。彼女の冷静な判断と素早い魔法の行使に、僕は内心で安堵を感じた。
「コハル!人形は任せていいから、そっちの人形……ああもうややこしい!ジェシーを殺しなさい!」
「はい!」
人形は任せて僕はジェシーに集中する。
次々に色んな属性の魔法をジェシーに向かって放つ。
幾つかは持っていた剣ではじき落とされたものの、殆どが直撃していく。
そこに、追撃の手は緩めない。少しでもジェシーの動きが鈍れば次の魔法を即座に撃ち込んだ。
(動きづらい……これもラヴィア様、貴方のせいですか……)
「【糸結び】」
そう呟いた次の瞬間、ジェシーは僕の目の前に現れた。
一瞬の事だった、反応できるはずもなく突き出していた左腕をその剣で切り離された。
「え」
そして次に首を掴まれ持ち上げられる。
「ぐっ……!」
僕の喉から息が漏れる。ジェシーは無表情のまま、僕の首を強く締め上げていた。
痛みと恐怖が一瞬にして全身を駆け巡る。左腕は切り離され、激痛が脈打つ。視界がぼやけ、意識が薄れかける。
ジェシーの目は冷たい光を宿しており、感情のない人形のように僕を見つめ続けている。
「放しなさいよ、木偶の坊」
ソフィア様の魔法の氷がジェシーを襲うが、何かの魔法を唱えた様で何となしに片手で薙ぎ払われる。
「【賛美曲】カノン」
ジェシーがソフィア様に気を取られている間に【賛美曲】を発動し光線は爆発し僕もろとも吹き飛ぶ。
その衝撃でジェシーは僕を離した。
「げほっ……ごほっ」
咳き込みながら、何とか立ち上がる。
だが左腕は痛みで全く動かせない、血がとめどなく溢れている。
(痛い、苦しい)
『コハル様、落ち着いてください。まずは傷の止血をしましょう』
ゼラの指示に従い、氷魔法で断面を凍らせて止血を行う。
『コハル様、もう一つアドバイスを……全力で体を動かしてください』
(!?やってるよ、でも反応できない)
『違います、貴方の【リリス】を使用した時の身体能力はもっと上です。ソレルの動きができるはずなのです』
……まあ、やるだけやるか。
爆煙が晴れジェシーが姿を現す、それと同時にソフィア様と僕は魔法を放ち攻撃する。
ソフィア様の魔法は、氷の槍を生成しそれをジェシーに飛ばす。
僕の魔法は、剣の形を象りそれをジェシーに向かって飛ばした。
ジェシーはそれを魔法で相殺すると、歩いて爆煙から抜けまた言葉を喋る。
「【織糸:不全大帝】」と呟くと、糸がジェシーの体に巻き付き形を成していく。
その姿は、鎧をまとった戦士乙女の様だった。ランスと丸盾を装備、後ろから白いの尻尾のようなものが揺れている。
彼女は少しも態勢を変えずに、僕に肉薄する。
ジェシーはランスを振り払う、それを氷の壁で防ぎさらに囲み視界を塞ぐ。
壁の周りに全属性を使い剣を形作った魔法を用意する。
「【織糸:荒槍】」
壁の中からそう聞こえると壁は一瞬で崩れて中から白い塊が溢れていく。
先端は鋭く、勢いもあるこの場に留まって居れば間違いなく串刺しになる。
『上に上がり、風の魔法で滞空を!』
慌てて空高く飛んでいく。
ソフィア様も反応できたようで、同じく宙に浮いている。
「ステージを作った?」
宙に舞っていた僕達は上空からそれを見下ろしてた。
「そうみたいね」
白い塊はジェシーの周りに円を描き足場となった。
「ステージ
円は白く輝き、辺りを照らす。
その光に照らされたのは、ジェシーだ。
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