第17話
数日後、いつも通りの仕事をこなしていると旦那様に声をかけられた。
「何度も済まないね、コハルちゃん」
「パパ、速く本題に」
ソフィア様が旦那様にそう急かすと、おもむろに話を始める。
「バルトラムについて決まった事があってね……」
「彼の死因は、馬車の転落事故による物になった」
旦那様は続けてそう言った。
「彼の悪事、計画については世間一般には公開されない。行政機関の信用を落としたくないんだろう」
「それに伴い、君たちがやった事も無くなる」
「……分かりました」
「ありがとう。……よし、これ以上先は大人のやる事だ」
「時間を取って済まないね、これで終わりだよ」
「はい、失礼します」
そう言って僕は部屋を出る。
★
ソフィア様と二人で屋敷を歩く。
「ねえコハル、ちょっと付き合ってくれる?」
ソフィア様はそう言って僕の前を行く。
「はい、大丈夫ですよ」
「そ、じゃあ行こ」
そしてソフィア様の後をついて行く。
屋敷を出て馬と馬車を手際よく準備していく。
「コハルは馬車の操縦はできる?」
「……経験も無いです」
「なら私がその、教えてあげるから」
「その、はいお願いします」
「乗って」
そう言ってソフィア様が先に乗り、僕もそれに続いて隣に座った。
「手綱を持って」
言われた通りに握ると、ソフィア様が僕の手を上から握りゆっくりと動かし始める。
「こうすると馬が動くから」
「は、はい」
僕はソフィア様を意識しながらも手綱を動かす。
「あっ!」
そして馬が動き出し、その勢いで体勢を崩すが、ソフィア様が僕の手を掴み何とか堪える。
「大丈夫?コハル」
「……あ、ありがとうございます」
顔が近い。心臓の鼓動が早くなる。
「しっかりしてね」
そう言って微笑むソフィア様を見て僕は顔が赤くなる。
「どうしたの?大丈夫?」
ソフィア様はそう言って僕の顔を覗き込んだ。
『コハル様、やはり人間は欲望に忠実です』
(うるさいよ!)
「だ、大丈夫です」
「そう……じゃあ続きね」
再び手綱を握らせてくれる。今度はしっかり握り馬を動かした。
★
「やっぱり覚えるのは速いわね」
ソフィア様は感心するようにそう言った。
「ソフィア様が教えてくれたお陰ですよ」
「そ?なら良かった。……じゃあ行きましょ」
ご機嫌なソフィア様を見て僕は安心する。
ソフィア様に付いて行くと一際大きい建物にたどりつく。
その建物の中は賑わいで満ちていた。市場のような場所で、商人たちが商品を並べ、買い物客たちが忙しく行き交っている。
ソフィア様は自信に満ちた足取りで中へ入って行く。
「ソフィア様、何か買うんですか?」
「そうね」
そう言って辺りを見回し商品を探す。
暫くして一つを選び商人の元へと持って行った。
そしてお金を払うと、こちらに戻って来た。
「はいこれ」
ソフィア様は手に小さな袋を持っており、僕に手渡した。
「これは?」
「開けてみれば分かるわよ」
言われた通り袋を開けてみると、そこには綺麗な花の髪留めが入っていた。
「髪留め?」
ソフィア様は微笑み、僕に言う。
「コハルにあげる」
「い、良いんですか?こんな高価そうなもの」
「ええ、勿論。コハルに似合うと思って買ったんだから」
髪留めを手に取り、僕はそれを見つめる。
「……ありがとうございます、大切にします」
「じゃ、付けてあげる」
そう言ってソフィア様は髪留めを手に取り、僕の髪に付けてくれる。
「うん、可愛い」
満足げに言うソフィア様。
「ありがとうございます」
僕は改めてお礼を言った。そしてソフィア様は言う。
「コハルは可愛いんだから、もっとおしゃれをするべきよ」
「そう……ですかね?」
おしゃれね、まあどっかの女神のせいで出来ないけど。
『そうですよ』
僕の疑問にゼラが答える。
(ゼラ、おちょくってる?)
『まさか』
そんなやり取りをしていると、ソフィア様が言う。
「さ、行くわよ」
「はい、行きましょう。ソフィア様」
その後、ソフィア様と買い物を楽しみ屋敷へと戻った。
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