第18話
その日の夜、仕事も終わり部屋でくつろいでいた。
「はぁ~お風呂入ろ」
体を伸ばしながら立ち上がり、着替えを持って浴場に向かう。
脱衣所で服を脱ぐ。
(一か月経つけど、なれないなあ……)
自分の体を見るのはいまだに罪悪感があるというか何というか、まあある程度は慣れたけど。
タオルをもって浴場に入る。
広い浴槽にはお湯が張ってあり、湯気が立ち込めていた。
かけ湯をしてからゆっくりと湯船に入る。
「ふあ~極楽」
肩まで浸かり呟く。今日は疲れたしお風呂は最高だなあ。
それにしてもやっぱり広いなこのお屋敷のお風呂は。
そんなことを考えていた時。
ガラッと音を立てて誰かが入って来た。
「んお?」
慌てて振り返り確認すると、そこにはセイラさんがいた。
「お、コハルが先に入っておったか」
「は、はい。あのセイラさんもお風呂ですか?」
そう言って腕で胸を隠し視線をそらす。
「女同士じゃ気にすることも無かろう」
そう言って湯船に浸かるセイラさん。
「ふっ肌を見られるのが恥ずかしい淫魔がおるとはのう」
「い、淫魔だからって何でもかんでも見せるわけじゃないですよ」
僕はそれに少しむっとしながら言う。
「まあ別に気にはせんがのう」
セイラさんは手でお湯を掬って肩に掛ける。
暫くお湯につかってからセイラさんが声をかけてきた。
「……なあ、コハルよ」
「はい、何ですか?」
「ワシは侍女の中でも一番の古株じゃ」
「はい、そうですね」
セイラさんはそう言うと湯船のへりに背中を預けてこちらに向いた。
「じゃからソフィア様については小さい頃から知っておる」
「前に話したあの日、アイシャを助けた日からソフィア様は人に頼らなくなった」
「自分で自立したともいえるが、未熟なことに変わりなかった」
「じゃが、最近のソフィア様は変わった」
「人に頼るように、頼られるようにな」
「コハルよ。お主のおかげじゃ」
セイラさんはそう言って僕を見た。
「い、いやそんな僕は」
「謙遜するなと、前言ったじゃろ」
セイラさんはそう言って湯を出る。
「ワシは先に戻る、体を冷やすでないぞ」
そう言って浴場を後にした。
その後僕も湯を出てその日が終わった。
★
それから一ヶ月位たった頃。
再び休みをもらった僕は、リッカさんとの待ち合わせ場所へと向かう。
「お待たせしました」
「待ってないよ、私も今着た所だし」
待ち合わせの時刻よりも早くに着いた僕だが、リッカさんは既に待っていた。
「じゃあ行こっか」
そう言って歩き出すリッカさんの後を僕はついて行く。
「と言っても何するか決めてないよね~」
「僕はリッカさんにお任せしますよ」
「そう?でも私今お金ないから、あんまりお金かからない事でいい?」
「勿論、大丈夫です」
僕は了承する。それから雑談をしながら街を歩いていく。
「へーコハルちゃん、死んでこの世界に来たんだ。そう言えば言ってたね」
「それにしても女神さまかぁ~私は会ってないな。いいなあ私も欲しかったなその【ゼラ】」
『……コハル様、安易に人に自分の情報を渡さない方が良いかと』
(別にいいじゃん?心配しすぎなんだよゼラは)
「私は、何にも貰えなかったなあ。まあ、仕方ないか」
「あんまりもらっても嬉しくない……どころか逆に要らないものももらいましたけどね」
「え?どういう事?」
「その女神さまにコスプレ衣装しか着られない呪いをもらってるんです」
「……!だからいつもメイド服なんだ」
「そういう事です」
「そんなことするんだ?意外と女神様って暇なんだね」
そう言って少し笑うリッカさん。
僕たちはそれから普通の休日を過ごした。
普通に遊んで、話をして、そうして一日が終わった。
★
そこからは代り映えの無い日常を過ごした。
毎日まじめに仕事をこなし、休みがあればリッカさんと一緒に出かけたりした。
仕事にも慣れて、侍女としての仕事もほとんど完ぺきと言えるほどに覚えた。
そんな異世界にもなれるような日常も僕が来てから八ヵ月が経とうとした時変わっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます