第16話
少し先の予定を思い出し、私は少し憂鬱になりながら歩き出す。
暗い空、人気のない道。歩む音は嫌でも耳に入ってくる。
暫く歩いただろうか、前から人の気配を感じた。
「リッカ、待たせやがって。金は持ってきたんだろうな」
「……あんた達のリーダーと話をさせて」
私はその男に言う。
「はあ?……まあいいか、面倒ごとならリーダーに任せりゃいいしな」
「……」
そして私はその男の後ろについて行き、建物の中へと進む。
★
地下へと続く階段を下り、扉を開ける。
「おお、リッカ。どうしたんだよ、改まって」
両手に女の子を侍らせた男がそう言った。
「これは今日の分」
そう言って硬貨の入った袋を男の手前にある机に投げる。
「おー。……で、それだけならここには来ねえだろ。本題を言えよ」
「……もう、報酬は十分に払ったでしょ。だからこれで終わりにして」
「……はあ?何言ってんだお前」
「忘れた訳じゃねえだろうな、俺達冒険者パーティー『黒の鬣』がお前の大切なガキのお守しながらこの国まで連れてきたんだぜ」
「十分な報酬はもう払ったでしょ!」
私はそう言って帰ろうとしたが、男に止められる。
「おいおい、良いのかよ。リッカ、もしお前が逃げたらお前の大切なガキどもがどうなるか……分かるだろ」
「っ!!」
私は怒りに短剣を引き抜く。
「はっ、何だよ。やる気かよ」
そう言った瞬間に男は立ち上がり、こちらへ飛んでくる。
「ぐっ」
それに反応は出来なかった。頭を掴まれ地面に抑えられる。
「力が無かったから俺達に頼ったんだろ。お前に力なんてねえんだ、だから無駄なことは止めようぜ?」
そう言うと男は手を離した。そして気色の悪い笑顔で私に言う。
「ならこれからもよろしく頼むぜぇリッカちゃん。金さえ払えば、何もしねえよ」
「……っ」
立ち上がり、逃げるようにその場を去った。
★
「はあ」
あのクズの言葉を思い出しながら私は一人で歩いている。
(……生きるしかない、分相応に)
怒りをグッと押し殺しながら歩く。
「大丈夫だよ、生きていける。うん、大丈夫」
きちっと節制をして、依頼をこなして稼いで……
あの子達には何も買ってあげられないなあ。
私は宿への帰り道を一人歩いて行く。
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