第16話

少し先の予定を思い出し、私は少し憂鬱になりながら歩き出す。

暗い空、人気のない道。歩む音は嫌でも耳に入ってくる。

暫く歩いただろうか、前から人の気配を感じた。

「リッカ、待たせやがって。金は持ってきたんだろうな」

「……あんた達のリーダーと話をさせて」

私はその男に言う。

「はあ?……まあいいか、面倒ごとならリーダーに任せりゃいいしな」

「……」

そして私はその男の後ろについて行き、建物の中へと進む。





地下へと続く階段を下り、扉を開ける。

「おお、リッカ。どうしたんだよ、改まって」

両手に女の子を侍らせた男がそう言った。

「これは今日の分」

そう言って硬貨の入った袋を男の手前にある机に投げる。



「おー。……で、それだけならここには来ねえだろ。本題を言えよ」

「……もう、報酬は十分に払ったでしょ。だからこれで終わりにして」

「……はあ?何言ってんだお前」

「忘れた訳じゃねえだろうな、俺達冒険者パーティー『黒の鬣』がお前の大切なガキのお守しながらこの国まで連れてきたんだぜ」



「十分な報酬はもう払ったでしょ!」

私はそう言って帰ろうとしたが、男に止められる。

「おいおい、良いのかよ。リッカ、もしお前が逃げたらお前の大切なガキどもがどうなるか……分かるだろ」

「っ!!」

私は怒りに短剣を引き抜く。

「はっ、何だよ。やる気かよ」

そう言った瞬間に男は立ち上がり、こちらへ飛んでくる。

「ぐっ」



それに反応は出来なかった。頭を掴まれ地面に抑えられる。

「力が無かったから俺達に頼ったんだろ。お前に力なんてねえんだ、だから無駄なことは止めようぜ?」

そう言うと男は手を離した。そして気色の悪い笑顔で私に言う。

「ならこれからもよろしく頼むぜぇリッカちゃん。金さえ払えば、何もしねえよ」

「……っ」

立ち上がり、逃げるようにその場を去った。





「はあ」

あのクズの言葉を思い出しながら私は一人で歩いている。

(……生きるしかない、分相応に)

怒りをグッと押し殺しながら歩く。

「大丈夫だよ、生きていける。うん、大丈夫」

きちっと節制をして、依頼をこなして稼いで……



あの子達には何も買ってあげられないなあ。

私は宿への帰り道を一人歩いて行く。

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