第22話
リッカさんに話した通り、僕はソレルのいる場所に向かう。
『戦闘指示は必要ですか?』
「多分大丈夫」
伝えられた場所には死体があったりしたけど、無視して覚悟を決めて階段を下りていく。
ゆっくりと気づかれないように一段ずつ……
「あーマジで、本当につまんねえ人生だよな俺達。なあそう思うだろ」
「そ、そうっすね」
「こんなしみったれた所で一生だ……まあ楽に金は稼げてるけどな~」
「あー来世は貴族か王族にでも生まれて。人生気楽に生きてたいぜ」
「は、はあ……」
階段を下りた先ではソレルが取り巻きと一緒に談笑していた。
その会話が終わるころに僕は扉を開け奴らの前に姿を現した。
「あ?誰だ」
「来世は貴族か王族に生まれたいんだって?なら良かった、今世はもう終わるんだし……早くも来世に期待が持てるね」
「何言ってやがる?」
ソレルが不思議そうに僕を見る。
「リッカさんのお金を返せ、そうすれば痛い目に遭わずに済むから」
「リッカ……ぷっハハあの女、惨めったらしくやられたら泣きつくのががこんな弱そうな女かよ」
ソレルが僕を指さして笑う。
「友達はしっかり選べよ、メイド女。こんな暴力の溜まり場に子猫を来させるような奴と友達なんだぜ」
「……【リリス】」
僕は右手にマナを集中させる。腕を振るうと、部屋の半分以上が氷で埋め尽くされ、数人が氷漬けになる。
「……は?」
ソレルはその光景に驚愕する。
「さて、僕の方から行こうか?それとも無力な子猫でも襲いに来る?」
僕はもう一度右手に力を込める。
「な、なめてんじゃねーぞ!」
そう言ってソレルは僕の方に飛んでくる。
ソレルに手をかざし、氷を放つ。
「ぐっ」
数個の氷がソレルに当たり後ろへと吹き飛ばす。
僕はもう一度ソレルに氷を放つ。
「ざけん……なっ!」
ソレルは剣で氷を弾く。
「おい!お前ら何ボーっと見てんだ、こいつを殺せ!」
ソレルが取り巻きに言う。取り巻きは剣を抜き僕に斬りかかる。
僕はマナを集中させて手を横に薙ぐ。すると氷の波が取り巻き全員を襲う。
取り巻き立ちは氷漬けになり動かなくなる。
「どいつもこいつも……使えねぇなクソが!」
ソレルは剣を構えて僕の方へ走ってくる。
ソレルは剣を振りかぶり、全力で僕に斬りかかってくる。その動きは速く、鋭かったが、僕は冷静に先を読み
僕は瞬時に氷の盾を作り出し、ソレルの剣を受け止めた。剣が氷に当たる音が響く。
ソレルは驚いた表情を見せるが、そのまま力任せに剣を振り下ろす。
氷の盾を砕けさせる。破片が飛び散り、ソレルの視界を遮る。その一瞬の隙を逃さず、
剣が再度振りかざされる前に、ソレルを氷の礫で吹っ飛ばす。
「ぐっ!クソが……」
ソレルは悪態をつき、床に崩れ落ちた。
(ち、近寄れもしねえ……何だこの魔術師。今まで見た中でも一番の魔法だ……クソがぁなんでこんな奴が来るんだよ!)
「まだやるの?」
「てめえ……俺はソレルだぞ!そんじょそこらのモブとは違う、才能あるっ人間なんだ!」
ソレルが半狂乱で叫び、剣を構えて斬りかかってきた。
そのスピードはさっきより速く、強く感じた。
手をかざし氷の礫を放つも狙いが外れ傷をいくつか付けるだけで止まらない。
(やば)『コハル様、風の魔法で吹き飛ばし距離を取って下さい』
「近づければ!てめえみてえなやつ!」
ソレルの剣が僕に迫る。その鋭い刃先が目の前に迫る瞬間、僕はすぐに風の魔法を発動した。
「【リリス】」
強烈な風の力がソレルを吹き飛ばし、彼の攻撃を一時的に中断させる。ソレルは床に叩きつけられ、咳き込みながら立ち上がる。
(ゼラ、助かったよ)
『滅相も無いです』
「うぅ何なんだてめぇ……風の魔法?さっきは氷の魔法だったはず」
「そんな奴この辺りじゃ希代の魔術師しか聞かねえ……てめぇ一体!」
ソレルが顔をゆがめて言う。
「うだうだ言ってないで、かかって来い。僕の友達を傷つけたんだ、それ相応の覚悟はあるんだろ?」
「クソが……てめえは絶対殺す!」
ソレルは剣を構え、氷の壁を走りながら向かってくる。
ソレルが飛ぶのと同時に氷にヒビが入る。
壁から壁に飛び移りながら移動するソレル。
『本気で魔法を使う事を推奨します、恐らく今のコハル様では見切れません』
『雷魔法をお勧めします。そして落ち着いて下さい、しっかり動けば負けるような相手ではありません』
「分かった……」
僕は右腕を振るうと具現化した電気は部屋全体に広がり逃げ場を無くす。
壁を離れ空中で無防備になったところ狙う。
ソフィア様に見せてもらった風と炎の魔法の融合による最大火力の火球。
「【リリス】」
「は……?」
ソレルは壁も天井も覆われ逃げ場を失った状況に置かれた。そして迫りくる火球。彼は顔を引きつらせ、恐怖の感情に支配された。
「ま、待て!降参だ、許してくれ」
僕はその声を聴き、火球を消した。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ソレルが息を荒らげながら僕を見る。その目にはもう戦意などなかった
「助けて欲しい?」
「頼む、た、たすけてくれ」
ソレルは必死に命乞いをする。僕はそんなソレルを冷たい目で見ていた。
「分かった……でも条件がある」
そう言いながら氷の魔法を消しここに居た全員を解放する。
「ここに居る全員僕の配下になってもらう」
「ああ、分かった……なんでもする。だから命だけは」
ざわざわと周りの取り巻き立ちが騒ぎ出す。
「君たちも死ぬのか僕の配下になるのかどっちか選べ」
僕は彼らを見ながら言う。
「お、俺達は死にたくないっす!何でもします!」
「わ、私も……」
「たす……けて……殺さないで下さい」
取り巻き達は僕に命乞いをしてきた。
よし、恐らくこれで【上立者】の条件を満たせたはず。
『はい、ここに居る全員コハル様の配下になっております』
(確か、配下になったら命令には逆らえないんだよね?)
『その通りです』
よし、それじゃあ。
「まず、リッカさんのお金を返せ。それから二度と人に危害を加えず、真っ当に生きること」
「は、はい……」
ソレルは震え、残りの取り巻きも素直に返事をした。
取り巻きの一人が立ちあがり、お金を取りに行った。
取り巻きが扉を開けそこに見えた者は大量の金貨だ。
「これ、リッカさんだけのじゃないな」
「あ、ああ」
「取った人から返すんだ、分かった?」
「わ、分かった」
ソレルは頷いた。
(【上立者】によって金額の誤魔化しとかは出来ないはず。よし)
取り巻きは金貨の入った袋を受け取り僕は背を向けこの部屋から出て行く。
(ッ!)
「お前ら今だ間抜けを仕留めろ」
ソレルがそう叫ぶが誰もが体を動かせないようだ。
「な、何だ?動きが鈍い」
「う、動けません」
「反省、全然してないんだね」
呆れた声で僕は言う。
「な、何をしたんだ」
「もう少し、自分の行いを鑑みてこれからを生きるんだ」
僕はソレルに背を向ける。
そのまま扉を開けこの場から去った。
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