第23話
外に出てみると通り雨は止み、綺麗な満月が広がっていた。
「コハル、ちゃん」
リッカさんは僕の方に駆け寄り抱きしめてくる。
「コハルちゃん、コハルちゃん……」
僕の胸に顔を押し付けて涙をボロボロ零しているリッカさん、頭をなでて落ち着かせる。
「良かった、ほんとに」
「取り返してきましたよ」
「そんなのどうでもいいよ……あ、やっぱり今の無し……」
その後、しばらくリッカさんに抱きしめられ、離してもらったのは十数分経ってからだった。
そのまま孤児院にリッカさんと一緒に戻る。
そして今、僕は椅子に座っている。そして机の正面に院長先生がいる。
「コハルちゃん、ありがとうね」
「いえ、僕はそれを受け取れないです」
孤児院が潰れかけているのは僕のせいでもある。
ならこの言葉は受け取れない。
「……どうしてだい?」
「すいません、ちょっとそれは……」
「そうかい。ならいいさ」
院長先生はそう言ってくれる。
リッカさんはと言うと子供たちと楽しそうに遊んでいる。
「ねえリッカお姉ちゃん、何で泣いてるの?」
「……あんたたちが生意気だから」
そう言ってにっこり微笑んだ。
「う、え?」
子供たちは困惑しリッカさんをチラチラ見ながら狼狽えている。
「ふふ、何でもないよ。それよりみんなご飯にしようか」
院長先生が笑顔でそう言うと。
「やったー」
子供たちが駆けだし食堂に向かっていく。
そんな中僕の方へリッカさんが歩いて来た。
「コハルちゃん、ちょっと話そ」
そう言って僕の手を引き、孤児院を出た。
「どうしたんですか?」
「……ねえコハルちゃん。その、ソレルは殺したの?」
「いえ、でも僕のスキル【上立者】で二度とこんな事が起きないようにしたんで、もう大丈夫だと思います」
「そう……」
リッカさんはどこか不安そうな顔で言う。
「リッカさん?」
「ねぇコハルちゃん。もうすぐこの街でちゃうでしょ」
「……はい」
そっか、確かにそうだった僕はソフィア様と一緒にストバード魔法学園に。
「何かお礼しないとなって思って……それでさ私をコハルちゃんの配下にしてくれない?」
「え?」
「コハルちゃんのスキルで配下にした人の力を得れるんでしょ、なら少しはお礼になるかなって」
リッカさんは笑顔で言う。
「う、う~ん何と言うか気持ちは嬉しいんですが。その……」
正直にいって僕の配下になるって言うのは余り字面の良いものでは無いし。
「……そっか~コハルちゃんは私みたいな、弱っちい冒険者の力なんていらないか」
「いえ、そんな事は」
「うん、じゃあコハルちゃんの配下にならせて貰うよ」
そう言って微笑むリッカさん、僕の手が掴まれる。
「……分かりました。宜しくお願いします」
『完了しました。今から橘 立夏はコハル様の配下です』
「これで大丈夫なの?」
「はいもう大丈夫です」
「そっか、まあ私の力なんてあんまり足しにならないだろうけど。しっかり使ってね」
「はい、任せて下さい!」
『コハル様、一つリッカのスキルを得ました。スキル名は
(ど、どうゆう事?リッカさんはスキルなんてないって)
『どの世界でも
言われてみればそうだ……元の世界だって自分の才能なんて何に有るか分からない、そもそもあるのかも。
その中で僕は分かる、案外これってすごいのかな。
『スキルの説明を行います、【賛美曲】は発動すれば左後ろ上辺りに光り輝く魔法陣が浮かび上がります』
『その状態で右手を拳銃のジェスチャーの形をし狙いを定めて『カノン』と発することで光線を発射できます』
ん~言われただけじゃ見当つかないな。
「【賛美曲】」
そのスキルを発動すると確かに魔法陣が浮かぶ。
「な、何してるのコハルちゃん」
右手を天に向け。「カノン」と発する。
すると、僕の右手から光線が飛びそのまま空に向かった。
その数秒後……光は爆発し散っていく。
「……良い物をもらいました」
「え?なにこれ。どうゆう事?」
リッカさんに簡単に説明をする。
★
「な、なるほど。何というか不思議な能力だね」
「リッカさんの力ですよ」
「いやいやコハルちゃんのスキルのおかげでしょ……でもそっかそんな力があったんだ……」
「ちょっと私もやってみるね【賛美曲】」
リッカさんの左後ろ上あたりに魔法陣が現れる。
「凄い!なにこれ!めっちゃ綺麗!」
はしゃぐリッカさん、すると。
「……カノン」
またも光線が放たれる。空に向かい光が大きく広がって弾けていく。
「わぁ~綺麗~」
幻想的な光景にリッカさんは見とれている。
「花火みたい」
「ですね」
「リッカさん、本当にありがとうございます。この力、大切に使わせてもらいます」
「ううん、コハルちゃんが私を助けてくれたから、そのお礼だよ。でも、これで少しはコハルちゃんの役に立てるなら、それで嬉しい」
リッカさんは微笑みながらそう言い、僕の手を優しく握った。僕たちはそのまま孤児院に戻り。日の変わるころに屋敷へ戻った。
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