第27話
僕たちは覚悟を決め、目の前のドールハウスに向かって歩き出した。ソフィア様は冷静を装っていたが、微かに震える手から緊張が伝わってきた。
僕はそんなソフィア様に寄り添いながら、一緒に前に進んだ。
ドールハウスの前に立つと、その巨大な扉がまるで僕たちを歓迎するかのようにゆっくりと開かれた。
中からは暗くて重い空気が漂い、まるで息を吸い込むことすら難しいように感じた。
中を見て見れば……おかしい程大きい。
「入るわよ、コハル」
「はい……」
僕たちは家の中に入る家の中は薄暗く、空気もよどんでおり、埃が舞っていた。
そして何より、何かが腐った様な匂いが強く漂っている。
「この匂いは……」
ソフィア様は顔をしかめる。
「ちっ死臭ね。何人もすでに死んでるんでしょう」
その時、僕達を歓迎したのは無くなる床だった。
「!!」
「ソフィア様こっちに!」
落ちていく僕達……途中僕達の間に瓦礫が割って入る、それが落ちて行けばその先にソフィア様は居なかった。
「ッーー!!」
地面が見えてくる。不味いこのままだと。
『魔法を!コハル様!』
!そうだった魔法で着地を。
「っ!!」
地面スレスレの所で風魔法で着地し、衝撃を和らげダメージを防ぐ。
辺りを見るとここは一室のようだ、そこにはいくつもの人形がある。
「分断……ソフィア様と逸れた」
僕は辺りを見渡す。しかしソフィア様の姿はどこにもない。
『コハル様、辺りを探索しましょう』
「そうだね……」
シッュっと風切り音がなる。
僕は咄嗟にそれを避ける、それは巨大なハサミの刃。
そして目の前にはそれを持つ二メートルは有る人型の人形。
ハサミを分解したようなものを片手ずつ持ち振り回しながらこちらに迫ってくる。
僕は一旦下がり、腕を突き出し人形を氷漬けにする。
「はぁはぁ……」
『落ち着きましょう、コハル様の敵ではありません。辺りの探索を優先しソフィアとの合流を』
「うん」
★
「はぁ……」
分断されて、このだだっ広い部屋に落とされた。
何が目的か……ね。私の目の前には数十体の人形が私を殺そうとカタカタと動いてる。
「本人も出ないで。やれるもんなら、やってみなさいよ」
私は目の前に集まる数十体の人形たちを見据え、静かに息を整えた。私の周囲には薄い闇が漂い、異様なまでに揺らめいている。
人形たちはカタカタと音を立てながら私に向かって迫り、その姿はまるで生きているかのように不気味だった。
「ふん、まるでおもちゃのパレードね」
「【晩嵐】」
軽く手を振ると、無数の闇の刃が人形たちを襲い、ズタズタに切り裂く。
それはまるで嵐のように。
「ふぅ……!あのね、それを人形とは言わないのよ」
薄暗い部屋、影は
見た目は下半身は馬、上半身は人形。どうにも気持ち悪いケンタロスのような姿。
「グオオオオォォォォォオオオ!」
何とも形容しがたい声を上げると、私に突進してくる。
私はそれを軽く避け、魔法を発動する。
「【転縛】」
無数の黒い鎖のような物が飛びだし、怪物の全身を一瞬で包む。
「グオォ!?」
怪物が逃げだそうとする前に私はさらに魔法を発動する。
「【影刺】」
幾つもの黒い棘が怪物に向かって射出され、突き刺さる。
「ガア!グギャァ!!」
突き刺さった棘が蠢き、まるで無数に分裂するように増えていき、そのまま体の内部まで蝕んで行く。
怪物はもがくように暴れ、その棘から逃れようとするが、それは叶わない。
「グギャアアア!」
怪物は鎖を引きちぎるが、すでに全身には棘が突き刺さり、身動きが取れず、もがく事しか出来ないでいた。
黒い刃は、怪物の首を刎ねる。
怪物の首がゴトリと落ち、胴体は力なく倒れた。
「……とりあえず、合流しないとね」
私は踵を返そうとしたその時。
「……ぅ」
誰かの声が聞こえた。それはか細い、今にも消えてしまいそうな声。
「!」
するとそこにはボロボロの人形がいた。
「た、助けて下さい……」
「え……?」
私の口から自然と言葉が漏れていた。
人形はカタカタと動き、私に近づく。
「お、お願いしま……す」
「助けてって何すればいいわけ?」
私はつい人形にそう答えていた。
「ラヴィア様を助けて……ジェシーをやっつけて……」
「え?」
「……ジェシーに取り込まれちゃったの……どうしたらいいか分からないの……」
私が何か言葉を発しようとするが、徐々に生気を失っていく。
「取り込まれた?なにそれ」
私のそんな言葉は聞こえてなく、人形は動かなくなった。
「どういう事なの?」
私は部屋の外に出る。廊下が長く延びているのが見えた。
「コハルと合流をしないと」
★
「はぁ……はぁ……」
かれこれ二時間くらい経っているだろうか、幾つもの部屋を探索するがソフィア様は見つからない。
息を整えて落ち着かせようとする。
『大丈夫ですよコハル様』
ゼラが優しく声をかけてくれるが、焦燥感は無くならない。
不安と焦りの混ざった感情が襲ってくる。
そして望みを募らせながら扉を開けるとそこには……何もない。
「外れ……次を」
そう呟いた瞬間、トンッっと誰かに背中を押されて部屋に入れられてしまう。
瞬時に扉は締まる。
「おい、そこの淫魔」
部屋の奥から声がし、そちらをみるとそれは人形だった。
警戒態勢に入ると人形はそんな事を気にせずに、倒れていた椅子を起こして座る。
「お前も座れ、少し話をしよう」
そう目の前の人形が指した席を見ると、腰かけられる椅子がある。
恐る恐る座り、身構えた。
「そう恐れるな、取って食いはしない」
僕が緊張した様子で座るとそう語り出す人形。
「貴方は誰ですか?」
「私か?私は、ラヴィア・アリエル……自分の力で自分を失った哀れな魔女だ」
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