第24話 朝早くから家に来る舞葉

「飛隣!おはよう〜!」


 日曜日の朝6時なんていう早すぎる時間帯にインターホンが鳴ったから何事かと思って眠気を抑えて玄関まで来て、いざ玄関のドアを開けるとそこに立っていたのは舞葉だった。


「こんな朝早くからどうしたんだ?何か急ぎの用事か?」

「ううん、飛隣に会いたかっただけ!」

「……それだけのためにこんな朝早くに俺の家に来たのか?」

「ちょっと!昨日から私たちもう恋人になったんだよね!?飛隣の愛おしくて可愛い彼女が朝早くに飛隣に会いたいって理由だけで飛隣の家に来たんだから、もっと嬉しそうにして!」

「悪い、まだ眠いんだ」

「もう〜!じゃあ家上げて!」


 俺はまだ少し眠たかったが、舞葉がこんなにも朝早くから俺の家に来てくれたにも関わらずそれを追い返して蔑ろにするのいくらなんでも恋人のすることじゃないと思ったため、俺は舞葉のことを家に入れて、リビングに上げた……そして水を入れると、二人で同時に水を飲んだ。


「まだ眠い?」

「ちょっとだけ」


 俺がそう答えると、舞葉は突然俺のことを抱きしめて言った。


「こ、これでもまだ眠たい!?」


 当然だが、舞葉に抱きしめられたのにも関わらず眠たいなんていうことはあり得ない。


「目が覚めた」

「素直な飛隣も良いね!」


 舞葉は笑顔でそういうと、何かを思いついたような顔をしてから言った。


「わ、私も眠たいな〜」


 とてもじゃないがこれが女優なんて信じられないというほどの棒読みだ。

 それが絶対に嘘であることはわかっているが、その嘘の意図がわからなかったため、俺は一応その言葉に沿って返事をした。


「寝たらどうだ?そこにソファがあるし、必要なら俺のベッドで寝てもいい」

「じゃなくて!……もう〜!恋人になったとしても飛隣が鈍いってことは変わりないね、今の流れで眠いって言ったら、私が飛隣にしたように飛隣も私のこと抱きしめないとダメじゃん!」

「そういうことか……でも────」


 俺は、舞葉が今求めていた通りに舞葉のことを抱きしめながら言った。


「そんなに遠回りに言わなくても、俺は舞葉のことを抱きしめる……だって、俺たちはもう恋人なんだろ?」

「っ……!う、うん……!わ、私たちもう恋人、だよ!!」


 そう言いながら、舞葉も俺のことを抱きしめ返してきて、そのまま二人でしばらくの間抱きしめ合った……そしてその最中、舞葉が呟いた。


「……ずっとこうしてたいね」

「舞葉がずっとこうしてたいなら、俺も付き合う」


 俺がそう言うと、舞葉は少ししてから「ううん」と言って俺のことを抱きしめるのをやめたため、俺も舞葉のことを抱きしめるのをやめた。

 そして、舞葉は続けて言う。


「ずっとこうしてたいし、今後もしたくなったらするけど……ずっとこれだけってわけじゃなくて、もっと色んな形で飛隣を愛したい」

「例えば?」

「た、例え!?えっと、それは、その……そ、そうだ飛隣!今日飛隣の家泊まってもいい?」


 舞葉は露骨に話を変えたが、俺はそのことを特に指摘しないことにした。

 そして、舞葉の問いに関してだが、明日は学校で、普通ならその学校前日の日曜日に突然泊まるとなったら色々と持ってこないといけなくなったりして大変だが、幸いなことに俺の家と舞葉の家は目の前だから、その辺りのことを気にしなくていい。

 当然、俺も舞葉が俺の家に泊まることを断る理由なんていうものはないため────


「あぁ、いい」


 そう返事をした。


「やった……!じゃあ今日はこのままお泊まりね!」


 舞葉と泊まりなんて、一体何年ぶりだろうか……仮に何年ぶりだったとしても、今までの幼馴染としての俺たちと恋人としての俺たちはもう違う。

 だから……これからは、新しい俺たちでたくさんの思い出を作っていく。

 そのことを胸に刻んで、俺は舞葉との一瞬一瞬を、今後も大切に過ごしていくことを決めた。

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