第13話 二人で飲みたい幼馴染

「飛隣!私は別にどっちでも良いけど、今から二人で一緒にスイーツ食べに行かない!?今チェックしたら、私の好きなスイーツ店で新しいスイーツとかドリンクが出たらしいの!それも今日!今日だよ今日!」


 放課後になると、舞葉は急いで俺の席に来てとても楽しそうな声音と表情で、目を輝かせて言った。

 ……その表情で「別にどっちでも良いけど」は、どう考えても無理があると思ったが、その舞葉の顔を見ていると、とてもじゃないがそんなツッコミを入れることもできない雰囲気だったし、特に用事もなかったため────


「わかった、行こう」


 と返して、舞葉と一緒にスイーツ店に行くことが決まった。

 ……こうして舞葉と二人でどこかに出かけるというのも、かなり久しぶりな気がするな。

 そんなことを思いながら、舞葉と一緒にスイーツ店に向かうと、少し行列が出来ていた。


「ちょっと時間かかるかもだけど、並んでもいい?」

「あぁ」


 そして、舞葉と一緒にその行列に並んでいると、前に居るおそらくは大学生ぐらいの男女二人組の話し声が聞こえてきた。


「今日の新作ドリンク、二人で飲めるドリンクあるんだって」

「そう、ストローは二人用?」

「うん、ハート型の二人用ストローらしいから、私たちみたいなカップルようだと思うよ、まぁ私たちは一人用でいっか」

「いいよ」

「……」


 それを聞いて、俺は思わずその二人から視線を逸らしてしまった……大人、というか、もう恋愛的な経験が豊富なんだろう。

 俺はふと、舞葉は今の会話を聞いていたのか、聞いていたならどんなことを思ったのかが気になったため舞葉の方を見てみると────


「ふ、二人で飲むドリンクってことは……距離が近くなるってことで……しかもハート型……一人用ってことは同じ飲み口……間接……」


 一人でぶつぶつと何かを呟きながら、とても顔を赤くしていた。

 ……本当に、撮影の時にすごい演技をしている舞葉と同一人物とは思えないぐらいに、普段の舞葉は感情がわかりやすいな。

 俺はなんとなく舞葉のことをからかってみたくなって、口を開いて言う。


「俺たちも二人で飲むドリンク一緒に飲んでみるか?」

「……え?……ええ!?わ、わ、私と飛隣で、ふ、二人で……一緒に!?」


 予想通り、舞葉は大きな驚きを示した。

 ……だが、からかいすぎるのも良くないと思ったため、舞葉も軽く冗談として受け流すと思うが、一応すぐに撤回しておくことにした。


「なんて、冗談────」

「ひ、飛隣がどうしてもって言うんだったら、私は、その……し、新作は飲んでみたいし、べ、別に、良いよ?」


 ……え?

 ……どうして承諾されてるんだ?

 ……だが、舞葉が承諾しようと、俺としてはなんとなくからかうために言っただけだ、そのことを伝えよう。


「舞葉、今のは冗談だから軽く────」

「で、でも、ストローは二人用が良いね……最初は正規の楽しみ方をして、二回目以降でまた違った、それこそ一人用のストローにして、二人で一緒に、とか……それも、飛隣がどうしてもって言うんだったら今日でも────」


 それからしばらく、とても小さな声で何かを言い続けている舞葉に対して、俺が何かを伝えることができるような隙というものはなく、気づいたら俺たちが店の中に入る順番になっていたので俺と舞葉は一緒に店の中に入り────その新作の二人用のドリンクというものを頼んだ。

 そう……結局、俺は全く補足説明をする余裕はなく、舞葉と一緒に二人用のハート型ストローでドリンクを飲むこととなってしまった。


「……じゃあ、私左から飲むから、飛隣は右から、ね」

「……わかった」


 どうしてこんなことになってしまったのかと思いながらも、俺はストローの右の飲み口、舞葉は左の飲み口から同時にドリンクを飲んだ。

 そして、同時にストローの飲み口から口を離すと、舞葉が頬を赤く染めながら言った。


「……甘かった、ね」

「……そう、だな」


 その後、俺と舞葉は、少しだけいつもと違う雰囲気で過ごした……周りにカップルの人が多かったから、もしかしたら少しだけその雰囲気に寄っていたかもしれない。

 だが……不思議とそのことに嫌悪感を抱くようなことはなく、その後舞葉と一緒にスイーツを食べたりもして、楽しく過ごすことができた。

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