第14話 大変な幼馴染
舞葉が台本を読み込んでいる時、それをいつも通り遠くからぼんやりと見ていた俺に、監督さんが話しかけてきた。
「かなりの頻度で舞葉ちゃんのドラマ撮影に付き合ってあげて、飛隣くんは優しいね……する事なかったら普通暇になるからって断りたくなったりしない?」
「どれだけ世間で人気だって言われてたとしても、舞葉は俺からしたらただの16歳女子高生で俺の幼馴染ですから、その舞葉が俺に付いてきてほしいっていうんだったらついていきます」
「そういう関係良いね〜、うん、すごく画になりそう」
監督さんは両手の親指と人差し指を使って、シャッタのポーズを作ってそう言った。
そして、そのポーズを作るのをやめると、俺に少しだけ距離を詰めて口を開いた。
「飛隣くん、私が前から気になってることあるんだけど、聞いてもいい?」
「なんですか?」
「実際、可愛い幼馴染が居るのってどう?」
「……はい?」
「だから、実際あんなに可愛い幼馴染が居るのって、飛隣くんからしたらどんな気持ちなのかなって!」
「どうしてそんなことが気になるんですか?」
「ほら!私監督だから、演出家とか脚本家とかとは違うんだけど、もしかしたらいつかそっちもやってみたいってなるかもしれないでしょ?そういう時のための参考にしたいから聞いてみたいんだよね〜」
確かに、そういうことなら一応俺の意見を聞きたくなる気持ちもわかるが……
「さっきも言った通り、舞葉は俺からしたらただの16歳の女子高生で、俺の幼馴染ってだけです……それ以上でも以下でもありません」
「あんなに可愛くて胸も大きい舞葉ちゃんに、16歳の一番盛んな時期の男子高校生の飛隣くんが抱くのはそれだけ?」
「……何が言いたいんですか?」
「言わせるの〜?じゃあ言ってあげるけど、恋愛────」
「ないです」
「まだ最後まで言ってないよ?」
「言わなくてもわかります、恋愛感情ですよね?」
「そうだけど……え、ないの?全く!?」
「はい」
俺がそう答えると、監督さんは突然俺の背中をさすり出して、俺のことを憐れむような表情で言った。
「……悩みとかあるんだったら、いつでも気軽に相談してね?一応これでも色んな人と関わる立場だから、重い相談とかでも舞葉ちゃんの幼馴染の飛隣くんだったら受けてあげるからね」
「どうして舞葉に恋愛感情を抱かなかったら俺に何か悩みがあるってことになるんですか!違いますからその可哀想な雰囲気出すのやめてください!」
「あれ、そうなんだ」
監督さんは軽くそう言うと、俺の背中をさするのをやめた。
舞葉とは違う意味で感情の起伏が激しいことに少し困惑しつつも、俺はしっかりと説明する。
「舞葉には、夢があるらしいんです」
「……夢?」
「その夢がどんな夢かは俺も知らないんですけど、小さい頃から決めてたらしくて、女優業を始めたのもその夢のためらしいです」
「うんうん、それで?」
「それで、って……だから、俺が舞葉に恋愛感情を抱いたりするわけもないし、できるはずもないってことです」
「……え?」
「……え?」
監督さんが何故か困惑したような表情をしたため、俺はそれに対してどこに困惑する要素があったのかと困惑して、互いに少しの間沈黙して見つめあっていると、監督さんが話し始めた────かと思えば。
「……飛隣くんは、舞葉ちゃんのこと何もわかって────」
「あ〜〜〜〜〜!」
という舞葉の声が遠くから聞こえてきたと思ったら、舞葉は俺と監督さんの方に走ってきて監督さんに向けて言った。
「監督!私が居ないからって、飛隣と二人でお話して仲良くなろうと────」
舞葉が何かを言おうとした時、監督さんは舞葉の両肩を掴んで言った。
「舞葉ちゃん……!……大変だね!」
「……え?」
舞葉は一瞬困惑した様子を見せた……俺だって意味がわからない。
舞葉が、大変……?女優業のことか……?
俺と舞葉は同じく困惑していたが、監督さんが舞葉に何かを耳打ちすると、舞葉は顔を赤くして言った。
「は、はい!?べ、べべ、別に私、そ、そんなんじゃないですよ!?そ、そんなじゃない、です、けど……はい!飛隣のせいで、私本当に大変なんです!」
え?俺……?
「ちょっと待て、どういう────」
「うんうん!舞葉ちゃん、こんな鈍い子は大変だと思うけど、私も話してみて良い子だってことはわかったから、舞葉ちゃんのこと応援するよ!」
「っ!そうなんですよ!本当に子供のまま大きくなったみたいに鈍いんです!!」
「二人で何の話を────」
「じゃあ舞葉ちゃん!撮影頑張ってね!」
「はい、頑張ります!」
そして、二人は何故かわかり合ったような表情をして、ドラマの撮影に移ってしまい、俺だけ置いてきぼりにされてしまった……そしてその撮影中色々と考えてみたものの、結局二人が何を考えていたのかということは全くわからずに撮影時間は終わり、俺は舞葉と一緒に家に帰った。
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