第15話 世界で一番わかってる幼馴染

「二年生になってから一ヶ月と少しが経過したということで、皆さんにはこれからペアを組んでもらって、そのペア同士で互いのことを質問していただき、より理解度を深めていただきたいと思います」


 今日は最後の時間が勉強ではないと聞いていて少し浮かれてたけど、またも先生が使うこと中で一番嫌いだという人もいる「ペアを組んでもらって」か……こうなると、もう前にも見たが────


「新天さん!よかったらペア組まない?」

「私新天さんのこともっと知りたい!」


 舞葉のところに、女子生徒たちが集まっていた。

 だが、舞葉は両手を合わせて言った。


「えっと、その……ごめんね!」


 舞葉は何も付け加えずにただ謝ると、その女子生徒たちの中を潜り抜けて、俺のところにやってくると、頬を染めながら言った。


「……ひ、飛隣?もし飛隣がどうしてもって言うんだったら、特別に私が飛隣とペアを組んであげても────」

「断る」

「え!?」


 前回も似たような状況で断らなかったから、まさか断られるとは思っていなかったんだろう。

 舞葉は、とても驚いた様子だった。


「ど、どど、どうして!?わ、私とペア嫌……!?」

「嫌とかじゃない、今回のはペア同士で理解度を深め合おうって話だろ?今更俺と舞葉が質問し合ったって、互いの理解度がこれ以上深まるとは思わない……俺は舞葉のことをほとんど知ってるし、舞葉だって俺のことはほとんど知ってるだろ?」

「そ、それは……うん、私が世界で一番飛隣のことわかってるっていうことだけは断言できるよ」


 舞葉は真面目な表情で、揺るぎない声音で言った。

 ……そこまでの返事が返ってくるとは思っていなかったが、それなそれで俺の話も進めやすい。


「あぁ、だから今回ので俺と舞葉がペアを組んでも意味が────」

「でも!でもでも!私は飛隣のこと世界で一番わかってるけど、飛隣は私のこと、もう全然!全然わかってないから!!」

「は、はぁ!?」


 自分は俺のことを世界で一番知っていると言っておいて、俺は舞葉のことを全然わかってないって……


「どうして舞葉は俺のことわかってるのに、俺は舞葉のことを全然わかってないって言われないといけないんだ!」

「そのことを確かめるためにも、今回はペア組もうよ!」

「っ、そこまで言うならわかった、俺が舞葉のことでわからないことなんてないって証明する」


 その後、それぞれの生徒たちがペア同士で質問し合う時間が始まると、早速舞葉は口を開いて言った。


「じゃあ始めるけど……私たちの場合は、質問じゃなくて問題形式の方が良いかもね、飛隣は一問目からわからないと思うけど!」

「言ってくれるな、じゃあそれでいい、早速問題を出してくれ」


 どんな問題でも、舞葉と十数年一緒に過ごしてきた経験で答えてみせ────


「私の初恋の人は誰かわかる?」

「……え?」


 舞葉の、は、初恋……?

 ……舞葉が誰かに恋をしていたなんて、聞いたことがないし、誰かに恋心を抱いて接していそうなところも見たことがない。

 ……なるほど。


「引っかけ問題か、ここで俺が適当な人の名前を上げてたら舞葉に笑われてたんだろうが……答えは居ない、だ」


 俺がそう答えると、舞葉は俺に向けて大声で言った。


「居るもん〜!!私!!初恋の人!!ちゃんと居るから!!」

「そ、そうだったのか!?」


 ま、舞葉に初恋の人……!?

 ……本当に驚いた、今まで舞葉が男子と話しているところはほとんど見たことがない、見たことがあったとしてもわざと素っ気なくしてるような印象だったのに。


「ほら!全然私のことわかってないじゃん!!」

「ま、待ってくれ、確かに恋愛面は知らなかったが、他のことなら────」

「もうダメだから!!やっぱり飛隣は私のことなんて全然、全然わかってないの!!」


 その後、何度か再チャレンジを試みがた、全て舞葉に断られてしまった……俺が舞葉のことを全然わかっていない、か。

 俺は、もしかしたら舞葉について深く考える必要があるのかもしれないと感じた。

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