第5話 可愛い幼馴染
「あ、あと三分で爆弾が爆発するんだって!どうしよ!!」
「落ち着いて、もし私たちを爆破させたいんだったらわざわざ時限式になんてしないはず……つまり、きっと三分の間で、この密室に隠された情報でこの爆弾を止めるか、それとも何か交渉手段を探すか……できることはいくらでもあるよ」
「そ、そうだよね!この部屋狭いし、きっとすぐに見つけられるよね!」
「うん」
舞葉が主演で出演している映画の、鬼気迫る緊張感あるシーン。
謎の人物に閉じ込められた主人公の女性とその友達である女性が、残り三分という短い時間で命懸けの情報収集を行なっている。
「紙があったよ……数字のパスワードが二つ書かれてて、それを時限式爆弾の後ろにある端末に入力したら良いんだって」
「本当!?じゃあ今すぐ────」
「待って、パスワードはどちらか一つしか正解が無いから、どっちを入力するか選択しないといけないみたい……」
「え〜!?ど、どうしよ〜!!」
セリフだけ聞いたら、俺の認識では完全に舞葉がこの慌てている女性になっていたと思うが、実は舞葉が演じているキャラこそ、この落ち着いている主人公の女性で、表情から声音まで、今まで十数年一緒に過ごしてきた舞葉とは別人で、当然その役に合わせて服や髪型の雰囲気は変わっているものの、その容姿しかこの女性が舞葉であるということを識別する要素がないほどに、舞葉の演技力は高かった。
「……すごいな」
「ね、カメラの人のアングルすごい上手」
「そうじゃなくて、舞葉の話だ」
「え、私……!?そ、そうかな?」
普段の舞葉なら「でしょ〜?」とか言って調子に乗りそうなものだが、やはり仕事に関してはそうでもないようで、自分よりもまず他人を褒めるというところで、舞葉の優しさが垣間見える。
そんな舞葉に、俺はしっかりと素直に答えた。
「あぁ、舞葉の出てる作品は一番最初のやつしか観たことなかったけど、正直本当に驚いた……普段はこんなに落ち着いてないのに、演技をするってなるとここまで別人になれるんだな」
「あ、ありがと……」
舞葉は顔を赤くして、自然と口元を緩ませてそう言った。
「……不思議、監督さんとかに褒められるよりも、飛隣に褒められた方が何倍も嬉しい気持ちになるよ」
「そんなこと監督さんが聞いたら悲しむんじゃないのか?」
「そうだね……じゃあ、内緒にしてて!」
そう言って、舞葉は綺麗なウインクをしてきた。
内緒にしてほしいことがある時に使うようなウインクじゃないな。
「内緒にするも何も、そもそも俺はその監督さんとか、舞葉の仕事関係の人と関わったりする機会はないから安心してくれ」
「え?あ〜!そっか、飛隣は現場来ないもんね」
「そういうことだ」
俺たちがそんな話をしている間に、爆弾を解除する話は一気に進んでいて、今ちょうどパスコードを入力していた。
「ほ、本当にこれで大丈夫かな!?」
「絶対大丈夫、安心して」
舞葉と話しながらも映画を観ていたが、結局他の情報は何も出てこなかったから、完全に二択の博打だ……それでも大丈夫と言い切るその
そして、いざそのパスコードを打ち終えると────二人を閉じ込めていたドアのロックが解除され、無事に脱出に成功して、二人の絆がさらに深められたというエンドで幕を閉じた。
切迫感や推理要素、友情など、一時間ほどの映画というにはかなり完成度の高い映画だったな……でもやっぱり、一番すごいと思ったのは。
「舞葉の演技力、すごかったな」
「そ、そんなに褒めたって、別に……ありがと!」
嬉しくないと言おうとしたと思うが、舞葉は本音を隠さずに笑顔でそう言った……こういうところは、本当に可愛い幼馴染だ。
そんなことを思っていると、舞葉がふととんでもないことを言い出した。
「飛隣、次の月曜日暇だったらドラマの撮影現場ついてきてくれない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます