第25話 イチャイチャしたい舞葉

 舞葉が朝食を作ってくれている最中、俺はなんとなくリビングのソファに座ってリモコンを手に持ち、テレビの番組を次々に変えていると、テレビの画面上に舞葉が出てきた……どうやらドラマのようだ。

 一分ほどぼんやりとそのドラマを観ていると、舞葉が朝食を作り終えたのか、両手にお皿を持って俺のところまでやって来た。


「お待たせ〜!今日の朝食はオムライスだよ〜!……きょ、今日の朝食だって!べ、別に毎日作ってあげるってわけじゃないのに!」


 舞葉は自分の発言に対して何故か自分で顔を赤くして照れていた。

 そして、お皿をテーブルの上に置くと、さらに続けて勢いをつけて言った。


「でも、いずれ結婚したら私が飛隣に毎朝ご飯作ってあげることになるんだ……朝だけじゃなくて、昼も夜も……それってつまり、飛隣っていう存在だけじゃなくて、飛隣の体自体も全部私によって影響されていくってことだよね……!?え〜!いつかそんな日が来るんだ〜!……いつかじゃなくても、今日みたいに毎日お泊まりをすればもしかして今日からそんな日が来る?だって、私が飛隣の家に泊まっても、家目の前だから困ることなんて何もないし……も、もしかして、同棲!?ちょっと飛隣〜!高校生で同棲なんて気が早いよ〜!」

「俺は何も言ってない」

「でも、私が女優業で疲れて帰って来た帰りに飛隣が『おかえり』って言ってくれたりして?その後で一緒に楽しくご飯食べたり一緒に寝たり?……良い!はぁ、いっそ今日から本当に────ん?」


 しばらくの間は延々と一人で喋り続けるかのように思われた舞葉だったが、テレビ画面の方を見て困惑の声を出した。


「私……?テレビで私の事観てたの?」

「あぁ、なんとなくな」

「私のことをずっと視界に入れようとするのは私の恋人としてとても正しい行動だけど、今はその私本人が近くに居るんだから、飛隣はテレビじゃなくて私のこと見てくれたら良いの!」


 そう言うと、舞葉はテレビの電源を切った。


「そうは言っても、舞葉は料理中だっただろ?」

「料理中でも私のこと見たいって思ってくれたんだったらいくらでも見てくれていいよ!ていうか、見るだけじゃなくて、例えば私が料理してる時に飛隣がイタズラとして私のこと後ろから抱きしめたり……しても良いんだから!」

「危ない」

「も、もう〜!」


 その後俺と舞葉は一緒に朝食のオムライスを食べ始めた────かと思えば、舞葉は俺の手に持っていたスプーンを取って、俺のお皿からオムライスを少し取ると、それを俺の口元に差し出して言った。


「はい!私からの愛情こもったオムライス!私が食べさせてあげるから口開けて!」

「ちょっと強引すぎないか?」

「私はイチャイチャしたいのに飛隣が全然応えてくれないからじゃん!」

「わかったわかった、食べる」


 俺が観念して口を開くと、舞葉は俺にそのオムライスを食べさせる。


「……どう?美味しい?」


 ……流石に俺のことをよくわかっているというのがわかる味だ、俺が好きな塩加減や焼き加減、オムライスの量とかが、本当に完璧だ。


「あぁ……俺用に作ってくれたオムライスだってことがよくわかる」

「気付いてくれたんだ……!」


 舞葉は嬉しそうな顔をしてそう呟くと、さらに続けて言った。


「私のこと好きになった?」

「元から好きだ」

「っ……!……私もだよ、飛隣」


 そう言うと、舞葉は一瞬だけ俺の唇と自分の唇を重ねた。


「お、おい……!」

「飛隣照れた顔してる〜」

「してない」

「もう〜!ほんっと仕方ないんだから〜!」

「……」


 いきなりキスをされるというのは、やはり来るものがあるな……本当はもっと反論したかったが、舞葉の言ったことも事実だったため、俺はそれを受け入れた。

 その調子で今日一日を過ごし、夜と呼ばれる時間帯になって来ると、俺は舞葉に言った。


「お風呂、入るか?」

「……え!?」

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