第26話 一緒にお風呂に入る二人

 俺のその発言に対して舞葉は何故か驚いた反応を示すと、次第に顔を赤くしていき、大きな声で言った。


「お、お風呂!?」

「どうしてそんなに驚いてるんだ?」


 お風呂に入るかどうかを聞いただけでどうしてここまで驚いているのかが俺にはよくわからなかったが、舞葉は顔を赤くしたまま続けた。


「だ、だって、確かに私たちもう恋人だけど、そんなにいきなりお風呂なんて言われても……!……でも、飛隣がどうしても入りたいんだったら、私も入りたくないわけじゃないし、むしろ……入りたい、から、入ってあげ────」

「さっきから何を言ってるのかわからないが、舞葉が先にお風呂に入りたいってことか?」

「……え?」


 俺がそう確認を取ると、舞葉の赤かった顔は見る見るその色を引いていった。

 そして、呆れたように言う。


「私別に先でも後でもどっちでも良いよ……はぁ」

「さっきまで騒いでたのに、どうしていきなりそんなに冷めた感じになってるんだ?」

「別に?一緒にお風呂入れると思ったのに……」


 舞葉は小さな声で呟いたが、ギリギリ俺の耳元にその声が聞こえてきた。

 一緒にお風呂……?


「なんだ、一緒にお風呂に入りたいのか?」

「え、え!?」

「男の俺から言うと下心があるみたいで嫌だったが、もし舞葉が入りたいって言うんだったら一緒に入ってもいい、昔何度も一緒に入ってるしな」

「い、良いの!?え、本当に!?」

「本当だ」

「じゃあ……入る!入るよ!」

「わかった」


 今から舞葉と一緒にお風呂に入ることが決定したため、俺は着替えを取りに行こうとしたが、舞葉は俺の腕を掴んで言った。


「飛隣……私たちもう恋人なんだから、飛隣が私にどんなこと思ったってそれは下心じゃないよ……だから、したいことあったらなんでも言ってね、それは……私もしたいことだと思うから」

「……あぁ」


 少し気恥ずかしかったが、こういったことも少しずつ受け入れていかないとな。

 舞葉はもう昼の間に着替えなど必要なものを家から持ってきていたため、それを手に持ちお風呂場に向かった。

 俺も自分の部屋から着替えを持ってお風呂場に着く。


「飛隣は先に入ってて、私もすぐ行くから」

「わかった」


 お言葉に甘えて、一応腰にタオルだけ巻いてから、俺はお風呂場に入った。

 すると、舞葉は言っていた通りすぐにお風呂場に入ってきた。

 一応体にバスタオルを巻いているようだ。


「バスタオル、巻いてこない方が良かった?」

「そんなことはない」


 当然体にタオルは巻いてくると思っていたからそこに驚きはないが……少し想定外なことがあった。

 舞葉とお風呂に入ると言っても、舞葉とは昔に何度も一緒にお風呂に入っているから、恋人になったとはいえお風呂に入るっていうだけならそこまで変化はないと思っていたが────舞葉の体が、タオルを巻いていてもわかるほどに昔と比べて成長している。


「飛隣〜?視線がいやらしくない?」

「……悪い」


 俺はそのことを認め、咄嗟に舞葉から視線を逸らした。

 だが、舞葉は俺の手に自分の手を重ねて言った。


「謝ることじゃないよ、むしろ嬉しい……勝手に私のこと恋愛対象から外してた頃の飛隣は、今の飛隣みたいに私のこと一切異性として見てくれなかったから」

「その節は……悪かった」

「……本当に悪いと思ってるなら、キスして」

「……え?」


 舞葉は突然関連性のないことを言い出した。

 本当に悪いとは思っているが、それとキスすることに関係があるとは思えない。


「別にキスしなくても、俺は本当に悪いと────」

「口実なんてなんでもいいの!早くキスして!」

「そうか……わかった」


 その後、俺と舞葉は抱きしめ合って、そのまま唇を重ねた。

 ……俺と舞葉の間には、今までにない雰囲気が漂っていた。

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