第27話 長い夜を過ごしたい新天舞葉

 二人で一緒にお風呂に入っていた舞葉と飛隣は、ある程度の時間が経つとのぼせる前にお風呂から上がった。

 舞葉は本当はもっとあの服を着ていない状態で飛隣とイチャイチャしたいと考えていたが、のぼせちゃったらこの後のが大変になっちゃうから仕方ないか、と一人で服を着ながら納得していた。


「こ、この後の行為……!?」


 舞葉は自分の脳裏に過ったことを想像して、思わず驚愕と恥ずかしさを覚えていた。


「べ、別にそういうことするって決まったわけじゃないし……!」


 言葉ではそう言いながらも、舞葉は実は恋人になってからの飛隣の態度に少し驚いていた。

 というのも、舞葉の予想では「飛隣は恋人になってもしばらくは恋人っぽいことをしてくれない」と考えていたが、実際は自分のことを抱きしめてくれたり、一緒にお風呂に入ってくれたり、キスもしてくれたりと、とてもこの数年間舞葉のことを恋愛対象から外し、あそこまでの鈍さを発揮していた飛隣とは真逆と言えるほどにとても恋人として舞葉が喜ぶことをしてくれていた。

 そして、自分がそれらのことに喜びを覚えていただけかもしれないが、それにしてもさっきのお風呂での飛隣との雰囲気はとてもだったと感じている。

 十年以上も飛隣と過ごして、今までにない雰囲気。

 恋人になることでしか、感じることのできない雰囲気。


「ど、どうしよ……一応もしかしたらと思って、着替えを持ってきたときに必要なものは準備しておいたけど……か、髪って乾かした方が良いのかな?それとも、濡れてる方が色っぽくて飛隣もそういう気分に入り込みやすい……!?服とかもパジャマとかじゃなくて、キャミで行ってラフな方が良いのかな……!?」


 舞葉は今になって色々と不安や思考が頭を過ってきて、その結果────服装はキャミソールに少し下着……それもただの下着ではなく、勝負下着が見えるようにして、髪型はタオルドライだけは一応しっかりしておくけどドライヤーでは乾かさずに、飛隣の待っている飛隣の部屋に行くことにした。

 もし飛隣がいきなりラフなキャミソール姿に嫌そうにしてたら「家だと思って着るの忘れちゃっった」と言ってすぐに服を着ればいいし、髪の毛に関してももし「髪の毛乾かし忘れたのか?」と聞かれたりしたら「飛隣に乾かして欲しくて」と言って、飛隣にドライヤーを乾かしてもらうことができる。

 舞葉はそんな考えを元に、飛隣の部屋に入った。


「お待たせ、飛隣!」

「舞葉、思ったより早かったな」

「服装はこんな感じだし、髪の毛もタオルドライだけにしたから」


 舞葉はそう言うことで、飛隣にそういった色っぽい部分を意識してもらうことにした。


「そうか……言おうかどうか悩んだが、下着が見えてる」


 そう言って少し舞葉から視線を逸らした飛隣に対して、舞葉は「待って待って、可愛すぎ……!」と思ったが、そんなことを言ったらこの雰囲気が台無しになってしまうため、どうにか堪えて言った。


「これ、勝負下着なんだよ?可愛い?」

「……あぁ、似合ってると思う」

「ありがと……ねぇ、そろそろ寝る時間だよね?」

「明日は学校だから、確かにそろそろ寝ないとな」

「……寝るの、同じベッドでも良いかな?」

「え……?」


 ここまで露骨に言うのは、舞葉としてもかなり恥ずかしさがあったが、この勢いを崩さないためにも、舞葉は色々と恥ずかしさが込み上げてくる前に言ってしまうことにした。


「俺のベッドはシングルベッドだから、一緒に寝るには狭い」

「良いの良いの、とりあえずベッド行こ……部屋の電気消して、ベッドのサイドライトにしよっか」

「……あぁ」


 飛隣は、舞葉のよくわからない勢いに少し困惑しながらも電気を消して、ベッドのサイドライトをつけると、もうすでに舞葉の座っていたベッドに飛隣も座った。

 視界には互いのことしか映らず、互いにお風呂上がりのため、その空間はとても良い香りがしていた。


「飛隣……とりあえず横になろ?私、飛隣のこと抱きしめたい」

「……わかった」


 二人は一度ベッドに横になると、舞葉は飛隣のことを抱きしめた。

 舞葉はこれから飛隣と二人だけの長い夜が始まるということを想像すると、とても胸を高鳴らせていた。

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