第9話 ペアを組みたい幼馴染
「はい、今日の授業は、二人一組でお菓子作りをしてもらいます……なので、二人組のペアを作ってください」
お菓子作り実習授業で、人によれば先生が使う言葉の中で一番嫌いだと言う人もいる「二人組のペアを作ってください」と言われため、クラスメイトたちは一斉に動き出した。
それぞれペアを組みたい相手が居るんだと思うが、女子たちはかなりの数が舞葉のところに向かった。
「新天さん!よかったらペア組まない?」
「新天さん!私お菓子作るの得意だよ!」
「え?えっと……」
喋りかけてきてる人たちの数が多くて流石の舞葉も困っている様子だったが、それらの人に対して一言で言った。
「ご、ごめんね!私組みたい人居るから!」
そう言うと、舞葉はその大勢の女子たちの中を潜り抜けて────俺のところにやってきた。
「……舞葉?」
「……さ、さっきの先生の言葉聞いてた?飛隣がどうしてもって言うんだったら、私飛隣とペアになってあげてもいいよ?」
「なってあげてもいいって、さっき組みたい人が居るからって言ってただろ?それで俺のところに来たってことは────」
「組みたい人は別に居るけど、飛隣は一人だろうから可哀想だなって思って幼馴染の情けで声かけてあげたんじゃん!で?今なら組んであげるけど、今組まないんだったら本当に組んであげないよ!」
「舞葉が他に組みたい人が居るならそっちと組んだほうが舞葉も楽し────」
「今なら特別に私が飛隣とペア組んであげるって言ってるんだから返事ははいしかないよ!はいは?」
「……はい」
勢いに負けて、俺がついそう返事をしてしまうと、舞葉は口角を上げて言った。
「まぁ?飛隣がそんっなに私とペア組みたいって言うんだったら組んであげるね〜!」
どちらかと言えば舞葉の方が組みたそうだったと思うが、そんなことを言ったらまた怒り出しそうだし、そうなったら今度は先生に怒られかねないから、今は何も言わないでおこう。
クラスメイト全員がそれぞれペアを組み終わったところで、早速お菓子作りを始めるように言われた……今日は、クッキーを作るという実習だ。
「私お菓子作りできるから、お菓子作りなんてできない飛隣は私の作ったお菓子食べるだけでいいよ!」
そう言うと、舞葉は砂糖やバターを混ぜ始めたが、俺は舞葉の手に持っているそれらの道具を後ろから掴んで言った。
「確かに俺はお菓子作りはできないけど、材料を混ぜることぐらいはできるから、力仕事ってほどでもないけどそれは俺がやる」
「え……う、うん、い、いいよ……」
舞葉は何故か潮らしくしながら頬を赤く染めていたが、俺は気にせずに舞葉の手に持っているその道具を取────え?
「舞葉、手を離してくれ、道具が取れない」
「待って、今抱きしめられてるみたいで……触れてもないし抱きしめられてもないけど、ポーズだけ見たら────」
「小声で何を言ってるのかわからない、いいから早く渡してくれ」
舞葉が物惜しそうにそれらの道具からゆっくりと手を離すと、俺はそれらの道具を使って砂糖やバターをしっかりと混ぜ、あとは舞葉の言っていた通り舞葉に任せることにした。
そして数分後────
「できた〜!私と飛隣のクッキ〜!」
綺麗な円形のクッキーが完成した。
「すごいな、形が全く崩れてない」
「日頃からよくお菓子作ってるから、このぐらいはね〜!」
「そうか、本当にすごいと思う」
「……そんな真っ直ぐ褒められたら、照れちゃうから、やめてよ」
「照れ────」
「あ〜!聞きたくない聞きたくない!今何も聞きたくない!そ、そうだ飛隣!あ、あ〜ん!口!開けて!食べさせてあげるから!」
「学校の中でそんなことするわけないだろ?」
「……家だったら良いんだ?」
「家なら……別に気にしない」
「っ……!……じゃあ、今度家で、ね」
その後、俺と舞葉は、二人で一緒に作ったクッキーを、感想を言い合いながら食べた。
────二人で一緒に作ったクッキーは、とても美味しかった。
◇
更新時間が1分遅れてしまい申し訳ありませんでした!
※◇部分は今読んでくださっている方以外には関係の無い部分となりますので、次エピソード更新時に削除させていただきます。
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