第8話 告白される幼馴染

「飛隣!毎日朝私と学校に登校できることにちゃんと感謝してる?」

「してない」


 朝の学校登校時に、突然意味のわからないことを言ってきた舞葉に対して、俺はハッキリとそう答えた。

 すると舞葉は呆れ顔で言った。


「はぁ、幸せに身を置きすぎるとその幸せが当たり前になっちゃうんだね……飛隣?前も言ったけど、私って結構告白されるんだからね?」

「言ってたけど、実際に舞葉が告白されてるところなんて見たことない」


 そんな会話をしていると、いつの間にか学校の中に入ったが、舞葉は気にせずに話し続ける。


「飛隣が見たことないだけで、私本当に結構モテてるんだから!そんなモテモテな私が飛隣と毎日一緒に朝登校してあげてるんだよ?」

「実際にその光景を見てないから、舞葉がモテてるなんて信じられな────」「あ、あの!」

「……え?」


 教室前廊下を歩いていると、同級生の男子生徒が俺たち……ではなく、舞葉に話しかけていた。


「伝えたいことがあるので、良かったら一緒に校舎裏に来てくれませんか!」


 男子生徒がそう言った途端、舞葉は俺にだけ見えるように「ほらね?」というとても苛立たしい表情を見せてきた。


「うん、いいよ……じゃあ行こっか」


 舞葉は俺に小さく手を振りながら、校舎裏へと歩いて行った……これで舞葉がモテているということが立証されてしまったから、今後さらに面倒なことになってしまいそうで────と考えていたが、俺は考えた。


「……一緒に校舎裏に行くってだけじゃ、まだ告白と決まったわけじゃない」


 むしろ、ここでもし「良かったら、ゴミたくさんあるので手伝ってください!」とかかもしれない。

 そうなれば、確実に自分がモテているという現状を嬉しく思って調子に乗っている舞葉に対して「誰がモテてるんだ?」と言い返すことができる。

 ……俺はその一縷の望みにかけることにして、こっそり校舎裏に行って、二人の様子を見に行くことにした。


「それで、話って何かな?」


 俺が校舎裏の木陰に行くと、二人は向かい合っていて、早速何か伝えたいことでもあるような雰囲気だった……だが、まだ告白と決まったわけではない。

 すると、男子生徒は気まずそうに口を開いた。


「その前に、確か……見空飛隣、いつも一緒に居るみたいですけど、付き合ってたりするんですか?」

「ううん、付き合ってないよ」


 付き合うという単語を聞いたらもっと動揺するかと思ったが、舞葉は全く動揺を見せていなかった。


「そ、そうなんですね……じゃあ、伝えたいこと伝えます────好きです!付き合ってください!」


 ……告白、だった。

 俺はもはやこの場に居る意味はないと考え、立ち去ろうかとも考えたが……さっき俺に対して嬉しそうに手を振っていたことから、もしかしたらこの男子生徒からの告白を受け入れることを視野に入れているのかもしれないと思い、もしそうなら幼馴染の初めての恋人誕生の瞬間を見届けないわけにはいかないため、俺はまだ見続け────


「ごめんね、もう好きな人居るから」


 え!?舞葉に好きな人!?

 俺が驚きを隠せないでいると、男子生徒も俺と同様に驚いていた。


「え!?そ、そうなんですか!?」

「うん」

「そ……そう、ですか……わかりました、でも、活動とか応援してるので、これからも頑張ってください!」

「……うん、ありがとね!」


 そして、男子生徒が校舎裏から出て行ったことを確認すると、俺は舞葉の居る校舎裏に出た。


「ひ、飛隣!?」

「随分バッサリと振ったな、それにしても舞葉に好きな人が居るなんて驚いた」

「きき、聞いてたの!?す、好きな人なんて居ない!居ないから!振る時に使いやすい嘘だよ!」

「そんな嘘で幼馴染の俺が騙されるわけないだろ?もし好きな人が居るんだったら協力────」

「居ない居ない!居ないから!」

「なんでそんなに隠────」

「も、もう授業始まるね〜!教室戻らないと〜!」


 そう言うと、舞葉は一人で校舎裏から走って行った……あんな丸わかりの嘘をついてまで、どうして好きな人が居ないと言い張るんだ?

 ……その理由を考えたがわからなかったため、ひとまずは舞葉に好きな人が居ると言うことを頭の片隅に置いておいて、いつか協力できそうな日が来たら協力する心構えはしておくことにした。



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 今後も引き続き楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、今この文章を読んでくださっているあなたも、この物語をお楽しみくださると幸いです!

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