第30話 大学生になった飛隣と舞葉
────三年後。
「飛隣〜!講義終わったから、今日は私の撮影付き合ってね!」
「あぁ、わかった」
俺と舞葉は高校を卒業して同じ大学に進学し、今では大学二年生になった。
舞葉は上手に大学と女優業を両立させていて、適度に大学生をしながら適度に女優業をしている。
そして、当然だが俺と舞葉は今でも恋人関係で、今では高校の時にはできなかった、マンションの一室を借りて、二人で同棲生活を送っている。
舞葉のドラマ撮影現場に向かって二人で歩いていると、舞葉が俺の腕を組んで言った。
「やっぱり、飛隣と触れ合ってる時が私一番幸せ」
「それを言うなら俺だってそうだ」
「……今日いつもより撮影短いから、帰ったらいつもよりもいっぱいイチャイチャできるよ」
「それは楽しみだな」
自分で言うのもなんだが、俺と舞葉は相当互いのことを愛し合っていて、これ以上ないほどに恋人として幸せな生活を送っている。
普通なら三年も付き合っていれば大きな喧嘩の一つや二つはあるのかもしれないが、俺と舞葉はもう十年以上も一緒に過ごしてきているから大きな喧嘩というものはなく、月に一回喧嘩をすることがあるとすれば、残ったお菓子をどっちが食べるか程度のもので、そういうのも結局二人で一緒に食べるということで落ち着く。
大学も同じで、舞葉が映画のキャストインタビューやキャスト参加イベントとかの例外的なもの以外の撮影は基本的に舞葉についていくし、ご飯もお風呂も寝る場所さえ同じなため、基本的には毎日本当にずっと舞葉と一緒に居る。
俺と舞葉はそのまま舞葉のドラマ撮影現場に到着すると、監督さんが俺たちに気付いて話しかけてきた。
「あぁ、来た来た、舞葉ちゃ────本当、毎回毎回見せつけるようにイチャイチャして……」
監督さんは俺たちのことを見ると、そう呟いて少し冷たい視線を送ってきた。
この監督さんというのは、高校の時に舞葉の撮影現場について行った時の監督さんと同じ人で、どうやらこの人はこの業界において誰よりも舞葉のことを重宝しているらしく、自分の監督する作品では主演、もしくは重要な役のところに必ず舞葉のことを使ってくれるそうだ。
他の監督さんとかキャスティングの人が舞葉のことを使いたいと言ったとしても、この人は是が非でも自分の作品で舞葉のことを使いたいということで、この三年の間ずっと舞葉のことを重宝し続けてくれている。
「ラブラブですみません!」
「謝られると余計惨めになるんだけど?」
「じゃあ謝りません!私と飛隣はラブラブです!」
「……もういいよそれで、でもいつも通り台本読む時と撮影の時は飛隣くんから離れること、わかった?」
「は〜い、じゃあ飛隣また後でね、私頑張ってくるから」
「あぁ、見てる」
「うん!ありがと!」
そう言うと、舞葉は笑顔で俺に手を振ってから、撮影現場の中心の方に移動して行った。
この場には俺と監督さんだけが取り残される。
「想像はできたけど、それにしてもまさか舞葉ちゃんと飛隣くんがこんなにもラブラブカップルになるなんてね〜」
「……その通りですけど、言葉にされると恥ずかしいですね」
「恥ずかしがることないよ、そんなにラブラブで居られるのって珍しいんだから……本当、二人が幸せそうで何より」
そう呟いた監督さんの表情や声音からは、大人らしさを感じた。
心の底から俺たちのことを思ってくれているようだ……俺は、その監督さんに対して感謝を伝え────
「……ありがとうございま────」
「でも、あの舞葉ちゃんはなんなの?独り身の私のことバカにするみたいに私の目の前でイチャイチャイチャイチャ……!舞葉ちゃんだけじゃなくて飛隣くんもだけどね!?ちょっとは監督業に専念して出会いのない私に精神的負担をかけないためにも私の前でぐらいはイチャイチャしないとまではいかないまでもあの舞葉ちゃんの見せつけるみたいなイチャイチャを止めようとは思わないの?」
「それは、その……すみません、舞葉が俺とイチャイチャしたいって言うなら、俺はそれに応えたいので」
「あ〜!もう!飛隣くんはそこで見てて!舞葉ちゃんは……容姿と演技力だけは、ずば抜けてるから」
そう言うと、監督さんは真面目な顔つきで撮影現場の中心に向かった。
……色々と人間味のある人だが、最後にはやはり大人らしさを感じることができたし、舞葉に対する信頼も感じることができた。
そのことに少し嬉しさを感じながら、今日も舞葉の撮影が終わると、俺と舞葉は一緒に帰り道についた。
「今日の私の演技、ちゃんと見てた?」
「あぁ、前よりも上手になってる」
「ありがと!……演技力だけじゃなくて、私、飛隣のことを好きって気持ちも、全然まだまだ止まる気しない」
「俺も同じだ」
「今日も帰ったら、いっぱい私の気持ち受け取ってね」
「わかった、俺の気持ちで返す」
数年前までただの幼馴染だった俺たちは、今では恋人としてとても愛し合っている。
そのことが……本当に幸せだ。
そして今は────ただただこの気持ちを、舞葉に伝えたい。
……今だけじゃない、俺たちはこれからもずっと、互いにこの気持ちを伝え合って生きていく、愛し合って生きていく。
舞葉が俺のことを好きな気持ち、そして、俺が舞葉のことを好きな気持ち……この気持ちはもう────ずっと止まらない。
そのことを確信しながら、俺は舞葉と一緒に家に帰った。
◇
この作品は、この話を持って最終話となります。
この作品に対する作者の気持ちなどは次エピソードで20時15分にあとがきとして語らせていただこうと思いますので、ここでは手短に。
『女子高生女優ランキング第一位』に選ばれた幼馴染は、俺にだけデレを隠せない〜演技派女優は俺にだけデレる〜という作品をこの最終話まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
あなたがこの作品を最後まで読んでくださった上での気持ちなどをいいねや星、コメントなどの形で送ってくださると嬉しいです!
また次エピソードに投稿されるあとがきや、別作品でお会いできることを楽しみにしています!
この作品を最後まで応援していただき、本当にありがとうございました!
◇
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