第2話 妄想する幼馴染

「ねぇねぇ、今って学校が終わって放課後に入ったばっかりで、一日の疲れが溜まってるよね?そんな飛隣にとっても良いニュース!もう本当に月に一回ぐらいしかない飛隣にとっての良いニュースを私が提供してあげるから!その良いニュースの内容聞きたいよね?」


 最近は撮影とか雑誌とかで忙しいらしいから、舞葉が放課後に話しかけてくるのは久しぶりだな……でも。


「今日はすぐに帰ってリアルタイムで見たいアニメがあるから、舞葉のおふざけに付き合ってる時間はない」


 バッサリそう言うと、俺は舞葉の横を通って教室のドアに向かう。

 別にアニメはリアタイ派というわけでもないし、そこまで色々なアニメが好きというアニメマニアというわけでもないが、今観ているアニメはとても面白く、前回は「これからどうなるんだ……」というところで終わってしまったため、すぐにでも観たいから今回はリアタイをするということだ。

 俺がそのアニメの展開を予想しながら歩いていると、俺と教室のドアを挟むように舞葉が飛び出してきて言った。


「アニメよりも私の良いニュースの方が大事に決まってるじゃん!だから早く私から良いニュースのこと聞いてよ!」

「聞いたら長くなりそうだから聞かない」

「こんなに可愛くて巨乳────胸囲の大きい幼馴染が居るのにアニメの女の子に夢中ってどういうこと!?」

「途中で恥ずかしがるならそもそもそんなこと言うな、あと別にアニメの女の子に夢中ってわけじゃない、また明日な」


 そう言って教室のドアから出て行こうとする俺に対して、舞葉は大きな声で言った。


「今日!本当は撮影だったんだけど、どうしても飛隣とお出かけしたくて無理言って休みにしてもらったの!最近朝とか学校以外だと、飛隣と話したり遊んだりできてなくて、寂しかったから、今日は飛隣と一緒に遊びたいなって思って……だから、良かったら今から一緒に出かけない?」


 そう言ってくる舞葉の表情は、きっとどれだけ演技力が高くても、演技では出せないほどに感情を揺さぶってくるものがあった……楽しみや期待、寂しさや不安の全てが入り混じった感情……それに、俺と出かけるために無理言って休みにしてもらったとまで言われたら、断れないな。


「わかった、一緒に出かけよう」

「え……良いの!?」

「あぁ」


 俺がは快くそれを快諾した────つもりだったが、舞葉は自分の胸元を見てから俺に言った。


「い、言っておくけど!私はアニメの女の子みたいに簡単に胸見せてあげたりしないからね!」

「確認しておくけど、舞葉はアニメをなんだと思ってるんだ?」

「女優友達に聞いたよ?可愛い女の子が胸揺らして踊ったりするのがアニメなんだよね?」


 ごく一部の作品の表面だけを切り取ったらそうかもしれないが、偏った知識にも程があるな。


「今度の休日、時間があったら俺の家で一緒にアニメを観よう、アニメの面白さを教える……俺はあまり観ないけど、きっとドラマと同じぐらい面白い」

「え……?ひ、飛隣から家にお誘い!?嘘……夢?」

「家にっていうか、アニメを観るだけだ」

「準備……とか?ドラマとか映画だと、家に誘われる時って……でも、飛隣に限ってそんな……草食系男子が、家では……!?あるある……!そういうのよくドラマとかである……!一応……準備だけ、しとかないと……!」

「何を言ってるのかよくわからないけど、俺の家で一緒にアニメを観るだけだからな」


 俺が何を言っても、舞葉は一人で何かを呟き続けている……どこかで大きな齟齬が生まれているような気がするが、とりあえず今から、久しぶりに舞葉と一緒に出かけることになった。

 舞葉が無理をしてまで作ってくれた一緒に出かけられる時間は、舞葉と楽しく過ごせると良いな。

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