第22話 怒っている幼馴染
高校生の過ごす土曜日と言えば、普通は友達と出かけたりとか、家でゴロゴロしながらゲームをしたり漫画を読んだり、そんな感じだと思うが、今の俺は────ただただ舞葉のことが心配だった。
俺は、視線をスマホの画面に落とす……スマホの画面には舞葉とのトーク画面が開かれている。
『昨日は体調が悪くなったみたいだったけど、もし看病が必要ならいつでも言ってくれ』
『ううん!全然大丈夫だよ!』
────俺はこのメッセージを見た瞬間、すぐに舞葉が嘘をついているとわかった。
あんなに暗い顔をしていたくせに、全然大丈夫なはずがない。
そんなことをずっと考えていると、他のことをやる気にもならず、俺はこの昼に至るまでずっとこんな感じで舞葉のことについて考え込んでいたのだが────そんなことをしていると、家のインターホンが鳴った。
「これでインターホンの相手が舞葉だったら、色々話せるんだけどな……」
でも、大丈夫と言って俺のことを遠ざけている時点で、そんなことはないだろう。
インターホンに出ることすら今の俺には少し面倒に感じられてしまったが、それでも一応玄関のドアを開けて対応することにした。
「はい、どちら様────」
「話したいことあるんだけど」
「……え?」
玄関のドアを開けると、来るはずが無いと思っていた舞葉がそこには居た。
「舞葉!?話したいことがあるのは俺だって同じだ、体調は────」
「大事な話するから、飛隣の部屋入れて」
「え?あ、あぁ……」
俺は、舞葉が今までに無いほどに怒っているのを感じ取り、舞葉のことを家に上げて俺の部屋にも入れた。
昨日フラついていたけどもう体調は大丈夫なのかとか、昨日暗い顔をしていたけどその理由はとか、色々と聞きたいことはあったが、舞葉が怒っていて俺から話ても良いような雰囲気ではなかったため、舞葉が話し始めるのを待った。
すると、数十秒ほどの沈黙の後、舞葉はようやくその重たい口を開いて言う。
「……監督に聞いたんだけど」
「え、監督さん……?」
俺は予想外の人物の名前が出て、思わず驚いた。
舞葉がこんなに怒っているのは、その監督さんに聞いたことというのが関係しているんだろうか。
「私には夢があるから、舞葉ちゃんに恋愛感情を抱いたりするわけもないし、できるはずもないって……そう言ったのは本当?」
「言ったけど……それと舞葉が怒ってる理由に何か関係が────」
「それは、私の夢の邪魔になるって考えたから?」
「……そうだ、舞葉の夢のために女優業が必要になるなら、どうしても仕事と恋愛を両立しないといけなくなる、そうなったら────」
「ふざけないで!」
……普段互いのことをからかい合って怒っている時の舞葉とは違う、本当の怒りの声。
きっとそこには、その言葉以上に色々な感情が含まれていることはわかった。
だが、舞葉の夢の邪魔になる可能性がある恋愛感情を舞葉に抱いたりするわけもないし、抱いたりできるはずもないと言うのは、俺からしてみればむしろ舞葉のことを尊重してのことだ……それをふざけていると言われるのは納得がいかない。
「ふざけてないし、どうして舞葉がそこで怒るのかも俺にはわからない」
「わからないだろうね、そもそも私の夢も何かわかってないのにわかるわけないよね……私の夢も知らないくせに勝手に邪魔になるとか考えて飛隣が勝手に私のこと恋愛対象外にしたんだもん……そのせいで、そのせいで私はずっと……!」
「わ、わかったから、一回落ち着い────」
「わかってないよ!わかってない!わかってないから教えてあげる!!私の夢は!いつか飛隣にとって異性としてのトップの魅力……女優として一番になって、飛隣と結婚することなの!!」
「……え?」
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