第15話 消された町
そして、13年前の地図を開き目を通していてあることに気づいた。
私の想定した方角と距離の辺りに確かに町があったようだった。
だが、塗り潰されており、町の名は判別できない。
地図は一年毎に更新されている。
私はさらに前の年度の地図を開くが、やはりこの地図もその町の名は塗り潰されていた。
その後、幾つか飛び飛びに調べたが、一番古い地図もそれ以外もその町の記述は全部塗り潰されていた。
ここにあるもの以外の詳細な地図を閲覧するというのは難しいだろう。
そもそも地図というのは国家戦略上の機密情報にあたり、本来ならおいそれと見られるものではない。
私がここに入れてこうしたものを閲覧できているのも偏に私が聖騎士団員であるからに他ならない。
となると古物屋などで簡単なものでもいいから古い地図を探すか、教区史か帝国史を調べるしかないかもしれない……
「こりゃまた散らかしましたね……」
そんなことを考えているとハーストの呆れ声が聞こえてくる。
振り向くと、資料を抱えて呆れ顔をしてテーブルの上を見ているハーストがいた。
私はハーストの持つ資料を奪うようにして受け取り
「資料ありがと、片付けお願いね!」
私は礼とお願いをして次のテーブルへと移動して聖騎士団名簿に目を通していく。
見る年度はまず14年前のもの、これで元々居た人員を把握する。
次に13年前に記録された名簿には殉教者(聖騎士団員が任務で命を落とした場合殉職者ではなく殉教者になる)や退団者の名が多く載っていた。
比べる手間が省けてありがたい。
さらにありがたいことに退団者のその後の行き先まで書いてあったものの、その殆どが帝国領各所に散っていた。
しかし、一つの名に私の目が止まる。
"聖騎士団魔術補佐員:テレサ=ワーテルス……聖レザントス修道院に転属"
聖レザントス修道院はこの聖都の旧市街内にある教会だ、場所も記憶している。
私はその名を持参した紙片に書き写す。
ハーストの様子を見ると漸くスクロールを片付けたところのようだった。
「ハースト、こっち片付けたら帰っていいよ、じや、私は用事出来たから!」
私はハーストに片付けを押し付けてその日は家路についた。
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