第26話 その男の名は……
ヴァロワレアンは値踏みするように私の反応を見る。
「そして教会は第二陣……今度は完全武装させた聖兵団を派遣したが、運悪く街は嵐にも見舞われていてね、呆気なく返り討ちにあってしまった……そして、ついに聖騎士団にお鉢が回ってきた……」
ヴァロワレアンの話しの内容に私の中で思考が飛び交う。
(動く死者!?そんなことがあり得るの……?)
まず頭に浮かんだのはそれだった。
(まさか、そんな伝染病が……?)
そこまで考えて聖騎士団名簿に10名ほどの殉教者が出てはいたが、多くの聖騎士団員が生還していると思われる記載がされていたことを思い出す。
今考えれば伝染病なら感染者が出ればもっと聖騎士団にも被害が広がっていたはずだ。
(伝染病は違う?……となると、異端の魔術?)
死者の身体を操る……そんな魔術があるならばそれは禁忌の領域だ。
死者を冒涜している。
(これが真実だとして、その事件自体をなんで街の存在を隠してまで教会は隠蔽したの……?)
教会への疑念まで湧き起こる。
(何より、何故こんな手の込んだことをしてまでヴァロワレアンは私にこんな話を……?)
混乱しかけたが、ようやく落ち着いてきた私はヴァロワレアンを見据える。
「……そして、その日の深夜、嵐の只中にあった街の中心部付近の教会に聖騎士団は辿り着いた……いや、辿り着けたと言うべきかな?」
私の様子を見てヴァロワレアンは再び語り始める。
「……ろくに実戦経験もなく、聖兵団ほど練度もない聖騎士団が、何故嵐の只中にあるそんな状況下の街の中央にある教会に辿り着くことができたのか……」
ヴァロワレアンは目を細め考えるような仕草をする。
「これは意図的に聖騎士団を招き入れたんだろうね……実際にその頃、動く死者達は殆どその機能を停止していたらしいしね……」
ヴァロワレアンは考察を交えて語り、思わせぶりに言葉を切り、一呼吸置く。
「……そして、その教会で"ある男"が聖騎士団によって捕らえた……」
ヴァロワレアンは言葉と共に狂気を孕んだ笑み見せる。
私の背筋を悪寒が走る。
「彼はレインフォルト=アーデルハイムと名乗り、自らをこの事件の首謀者であり、そして医師と称したそうだよ……」
私は歪なその表情に『ヴァロワレアンに関わらない方がいい』というハーストの言葉を思い出していた。
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