第31話 正義
"もしかして、レインフォルト=アーデルハイムは今も生きているのではないか"
13年前というと、まだ異端者狩りが盛んな頃で普通に考えて火刑に処されているものだと私は無意識に決めつけていた。
私の知る限りレインフォルト=アーデルハイムは"最強にして最悪の異端者"だ、そうなっていて然るべきだ。
しかし、もしレインフォルトが教会と何かしらの取り引きをしていたとすれば……
それは彼の存在自体が教会にとっての禁忌になり得る……これが公の知る所になれば、教会の威光は失墜するだろう。
取引の内容にしても、もし一人で街一つを陥落させる程の力と技術を持つ存在ならば教会との取引材料を持ち合わせていてもなんの不思議もない。
(もしそうなら、教会と異端者が繋がっている……?)
私は目を瞑り思考の続きを紡ぐ。
(なら、私の信じる聖アリエラの教えの正義は……どこにあるの……?)
下火になったとはいえ今尚続く教会の起こした異端者狩りは多くの異端者を炙り出し……死に追いやった。
『異端者は須く悪であり、駆逐すべきである』
多くの聖アリエラ教徒がそれを信じて夥しい数の異端者達を火に焚べた……
私の考えが正しいのなら、教えの正当性の全てを他ならぬ教会自身が反故にしたようなものだ。
(異端者狩りに……教会に正義がなかったのならば、残るのは教会の罪だけじゃない……)
私は身震いして頭を振る。
「クレアちゃん……何やってんの……?訓練始まっちゃうけど……?」
かけられた言葉に顔を上げるとハーストがやや引き気味の引き攣った笑みをこちらに向けている。
(頭を冷やさないと訓練どころじゃない……)
私はそう判断する。
「ごめん……私、調子が悪くなったから帰るわ……マルコ小隊長に伝えといて……」
私は疲れた声音で言って心配そうな表情を向けてくるハーストの横をすり抜け更衣室へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます