第34話 道
青が眩しく見えるほどの快晴の空の下、草が疎に生えた道にゆっくりとしたテンポで蹄の音が刻まれて行く。
聖都の周囲は荒涼とした平原が広がっている。
起伏がないからこの辺りは雨が少ない。
雲が素通りしてしまうからだ。
周囲の植物もさほど茂っておらず、時折灌木が見られる程度の植生となっている。
辺りは獣の声も鳥の囀りすら無く水を打ったかのように静まり返っていて、蹄の音以外は自分達の足音と纏う鎧が立てる金属音だけ……
私達はゆっくりと進む馬車を囲むように編隊を組んで歩いていた。
かなりの時間装備を着けたまま歩いているため、私達の疲労はかなりのものだ。
しかし、私の前を行く馬車は歩みを止める兆しを見せない。
途中で感動的な朝日を見ることができたが、前を行く異様な馬車と積荷は否応なく私を含め恐らくこの任務に参加する全員の不安を掻き立てていることだろう。
しかし、それよりも気になっていることがあった。
この方向、この道は……あの地図から消された街"トラード"へと続く道だ。
あの後聞いたことだが、トラードは聖騎士に叙任されたら必ず一度は秘密裏に聖務として行く場所らしかった。
故に、あの街の存在を知らない者はここには居ない。
他の団員達もそれに気がついているようで、周囲の空気に溶けている戸惑いの色が最初より濃くなっているのを感じる。
トラードは秘密裏に何かをするなら絶好の場所といえる。
こんな場所にこんな異様で、且つこんな物々しい護衛をつけなければならないような得体の知れない"物"を運んで、一体何をしようというのか……
そんな疑問が脳裏に焼き付いてきた頃、目的地と思われる廃墟のシルエットが彼方に見え始める。
地平線と青の彼方に臨むその風景はどこか幻想的に見えたが、そんな光景を前にしても私の心中には暗雲が黒く立ち込めていた。
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