第18話 家族

 私は重い足取りで家路についていた。


 通常、団員は聖騎士団専用の寮に住む。


 しかし、私は女性ということもあり入寮するわけにいかず、聖職者として勤めている兄に頼り聖都に別邸を用意してもらい、そこで実家で幼馴染のように育った気心の知れた侍女と共に生活している。


 鎧一式は今は着けていない。


 普段つけるには動き難いこともあり、詰め所の保管庫に預けるのが普通だ。


 家を囲う塀の中まで来て、私はドアの前に一人の聖職者であろう男の後ろ姿があることに気付いた。


 高位の聖職者が着ることを許された白と赤を基調としたローブは目立つ。


 彼は私に気づいたのか、振り向き私を見て微笑み


「久しぶりだね、クレア」


「アーネスト兄様っ!!」


 懐かしい顔、懐かしい声音に私は彼の名を呼んで駆け出し抱きつく。


「ははは、相変わらずだね、クレアは」


「本当にお久しぶりですっ、アーネスト兄様が家を出られてもう7年以上経つのですもの!」


 私は体を離し、懐かしい顔を見ながら捲し立てる。


「もう少し早く会いに来たかったのだけどね、まぁ、聖職者というのも忙しくてね……」


 アーネストは言葉尻を濁す。


「お会いできただけで嬉しいです!、変わっておられないようで安堵いたしました」


 私の言葉にアーネストは微笑み


「クレアは綺麗になったね……兄として鼻が高いよ」


 その言葉に何かくすぐったい感じがして私は苦笑し


「でも……私は嫁げませんでした……」


「それはクレアが望まなかったからだろう?、クレアはクレアらしくあればいいと私は思うよ」


 兄の言葉に私は涙が出そうになる。


「はいはい、クレアお嬢様、久々のアーネスト様との再会が嬉しいのはわかりますが、そろそろ入って下さいませ……せっかくご馳走を作ったんですから」


 ドアが開いて私の幼馴染で侍女にして世話役を務める同居人のエリスが顔を出した。

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