第3話 唐突な兇刃
「ここで一体何があったの……?」
私は誰にともなく呟いた。
暫く佇んでいた私はひとつ息をついて踵をかえし、教会から出る。
陽光の降り注ぐ場所に出て少し視界が白むが、すぐに視力は回復し、目に入ってきたのは廃墟と化した街並みだった。
この街はかなり栄えていたらしく、苔むしてはいるが石畳の敷き詰められた路面と、壊れ朽ちてはいるが整然と並ぶ建物は雑多で混沌とした聖都を見慣れてきていた私を帝都に帰ったような気分にさせる。
結構な時間この辺りを歩き回っていたが、この街全体がこのように廃墟と化していた。
路傍にはそこかしこに白骨と成り果てた遺骸がそのまま晒されており、それを見た私は最初驚き竦んでしまった。
街の散策を再開した私は目についた一軒の比較的状態の良い家に入る。
日は差し込んでいるが薄暗い室内で最初目についたのは倒れたテーブルと床に散乱した食器類、それらはやはり埃をかぶり、壁には教会で見たものと似たシミがついている。
ここにいた住人は食事中だったのだろう。
そこに突然押し入ってきた何者かに襲われてここの住人は壁と、そして埃で見えないが床にも広がっているであろうシミを自らの血でつけることになったのだろう。
私はその様をただ見ていた。
突然、首筋に冷たい感触がはしる。
「動くな」
背後から発せられた男の声音が私の行動を制する。
私は目だけを動かし、"首筋に剣が当てがわれている"という自身の状況をどうにか把握した。
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