異世界のサバゲーマー 〜転移したおっさんは国を救うために『ミリマート』で現代兵器を購入して無双します〜

フユリカス

第1章

1.プロローグ

「ふっ……ふっ……」


 流れる汗を拭おうともせず、坂本勇馬さかもとゆうまは息を殺しながら茂みに隠れてを見据えていた。

 その手に持つのは、89式小銃と呼ばれる主に陸上自衛隊で使われる突撃銃アサルトライフルだ。

 相手との距離は20m程か。

 勇馬は、ホロサイトと言われる光学照準器で敵に狙いを定め、トリガーを引いた。


 タタタタタッ――!


 が勇馬の耳に届く。

 銃身の中を弾が駆け抜け、フルオートで発射された弾は、敵の身体へと吸い込まれていく。


「――ッ!?」


 勇馬の撃った数発の弾が敵に命中し、相手は驚きを露わにした。


「……ヒットでーす」


 相手は諦めた表情で手を挙げ、撃たれたことを宣言した。


「ふぅ……」


「お疲れー、勇馬!」


「ああ、お疲れ」


 緊張が解れて一息ついた勇馬は、大学時代からのサバゲー仲間に返事をした。

 今いるところは山の中、勇馬はここで仲間と一緒にサバイバルゲームをしていた。

 大学に入ったばかりの頃に事故で親を亡くし、田舎から出てきていたため知り合いもいなかった頃、偶然サバゲー同好会に出会ったのだ。

 元々、エアガンやモデルガンといったものが好きだったのもあり、試しに入ってみたら見事にハマった。

 所謂ガチ勢ではなくエンジョイ勢というものなので、知識はそこまで深くはないが、色々知っていくこともまた楽しんでいる。

 今年20代最後の年齢を終えたが、独り身ということもあり、こうやって月に数回仲間で集まってサバゲーに興じていたのだった。


「俺たちも、もう30か……おっさんだな」


「独り身のおっさんだからこそこうして楽しめるんだぜ?」


「それはまあ……そうかもな」


 勇馬が雑談しながら休憩をしていると、


「そんじゃあもう一戦しようかー!」


「「おー!」」


 その提案に、全員が呼応するように声を上げた。

 それぞれのチームに分かれ、離れた位置につく。

 先ほどもそうだったが、これは殲滅戦といわれるゲームだ。これは言葉通り相手を殲滅させれば勝ち、時間切れになったら残っている人数で多い方が勝ちというわかりやすいルールだ。

 スタートコールがかかり、試合が開始した。

 勇馬は早速動き出す。身を屈めながら、木や岩などに隠れつつ進んでいく。


「ふう……」


 広大な山の中でやるサバゲーは走り回る楽しさもあるが、やはり疲れる。

 この山は、同好会の1人の祖父が所有する山で、広い範囲で自由に使わせてもらっている。完全に整備されているわけではないので少し危険ではあるが、それはそれで普通のフィールドとは違ったおもしろさがある。


「――!」


 ここから40mくらいだろうか、勇馬は敵が木に隠れてるのを発見したが、距離もあり、木が盾になっているのでもう少し近づくことにした。

 勇馬の潜む場所より5m程前方にいい岩陰が見えた。

 あそこなら角度的にも都合がいい、勇馬はそう思い移動するタイミングを見計らう。


「――――」


「――――」


 どうやら2人いるようで、なにやら会話している。

 チャンスだ。これなら気付かれずに移動できるかもしれない。

 勇馬は注意深く相手を見、敵同士会話を始めたタイミングで勢いよく走り出す。


「――ッ!」


 岩陰まで後3m……2m……1m……!

 なんとか気付かれずに済んだと安堵の表情を浮かべる勇馬。

 しかし――、


「――は?」


 突然、地面がなくなった。

 いや、実のところ草葉で隠れていただけで、最初からなかったのかもしれない。


「――うぉわあぁああぁぁああ――っ!?!」


 勇馬は為す術もなく、先の見えない暗闇の中に落ちていった。



 ◆◇◆ 



「――ん……うぅん……?」


 少し重く感じる頭を起こし、勇馬はゆっくりと瞼を開ける。


「んー……あれ、俺穴に落ちなかったか?」


 辺りを見てみると、勇馬のいる部分が少し開けているだけで、森の中にいるのは変わらなかった。


「結構落ちたと思うんだけどなぁ……あっ! 壊れてないよな!?」


 ふと思い出したのは電動ガンのこと。勇馬にとっては、生きていくうえでなくては困るというくらい大事にしてきたものだ。


「……んん? あれ?」


 89式小銃を手に持ってみると、いつもと何か違う。いや明確に違う。

 これはサバゲーを始めたときから勇馬は愛用しており、メインウェポンとしてずっと使ってきたものだ。もちろん他の武器も持ってはいたが、思い入れが違う。


「見た目も違うし質感も全然違う。それにいつもより重いぞ……?」


 勇馬の89式小銃は東京シカクイというメーカーの電動ガンで重さが3.7kg程ある。だが今抱えている銃は、ズッシリといつもより重く感じる。

 勇馬は弾倉を抜き出し確認してみると、


「え?」


 そこに入っていた弾は、いつも使用しているバイオBB弾ではなく、どう見ても金属にしか見えない弾だった。


「ダミーカートリッジ……じゃなさそうか? しかもインサートもないし、これじゃあモデルガンですらないぞ。というか、俺の89式はいずこ……」


 通常モデルガンには、銃身内部にインサートと呼ばれる板のようなものが入っており実銃として改造できないようになっているのだが、これにはそれがないのだ。


「――もしかして!」


 勇馬は慌ててホルスターから9mm拳銃を引き抜く。

 これも89式小銃と同じで自衛隊でも使われているもので、サバゲーを始めたときから使用しているものだ。

 だがそんな愛着のある拳銃は、やはりいつもより少し重い。それに質感も違う。

 弾倉を取り出してみると、


「うわ、マジか……」


 こちらも込められている弾は金色に輝く見慣れないものだ。やはりというかインサートもない。

 そして勇馬はふと気付く。

 サバゲー同好会の全員にはあるキーホルダーが配られるのだが、それが見当たらない。

 膨らみのあるポーチを開けてみると、そこには種類はキーホルダーと同じだがサイズがまるで違うものがあった。


「――M26手榴弾……!」


 背筋がぞくりとする。

 ごく普通の一般人が爆弾に触れる機会なんてないのだから、勇馬が怯えるのも当然と言える。


「これ本物なのか? 少なくとも俺が持っていたものじゃないけど……どうしよう、これ」


 手榴弾が本物かどうか確かめる方法なんて知らず、まさかピンを抜いて投げるわけにもいかず困ってしまう。


「とりあえずしまっとこう。よく見りゃ服装も違うな。これって防弾チョッキ3型か? 俺一体どうしちゃったんだ?」


 M26手榴弾をポーチに戻すと、自分の服装がサバゲー時のものと違うことに気付く。

 今の勇馬の格好は陸上自衛隊そのものだった。


「――キャアアアァァーッ!!」


「――!」


 突如、森の中に響き渡る悲鳴。勇馬は思わず首をすくめて89式小銃を抱きしめた。


「なんだ……?」


 自分の身に起こっている事態と女性の悲鳴で、勇馬の心臓は鼓動を速くするが、このまま放っておくわけにもいかない。

 勇馬は89式小銃のグリップを強く握り締め、意を決して森の中へ飛び込んでいった。


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