51.基本講座
「わっ、弾が入るとまたずっしりと重さを感じますね」
「うぅ、これずっと構えてるの結構大変かも……」
2人は林に向かってP230を構えて、実際の持ち方を確認していた。
フィーレはそれでも安定しているほうだが、ルティは少しぐらぐらと揺れているので、慣れが必要かもしれない。
「今はまだ
当然2人がトリガーを引いても弾は発射されない。とりあえず、これで撃つ時の感覚というか流れ的なものはわかったはずだ。
「実際に撃つとそこに反動が加わるからな。さすがにP230くらいなら大丈夫だと思うけど、火薬量の多いマグナムなんか撃つと、反動で顔面を強打するなんてこともあるらしいぞ。くれぐれも注意してくれな」
「それは……かなり痛そうですね」
フィーレが顔を顰める。
「骨とか折れちゃうみたいなの。あと、あまり銃に顔を近付けすぎて撃つと、排莢する時にスライドが後ろに下がるから、それに当たって怪我することもあるみたいだから気をつけてね」
「うわっ、考えただけで痛そう。ねぇリナ、どうせならお手本見せてよ」
「そうだな、まずは俺達で撃つところを見せてあげようか」
「わかりました」
勇馬と莉奈はフィーレとルティーナからP230を預かり、
「いいか、このスライドをしっかり引いて離すと弾がチャンバーに装填され、ここの
2人に説明しながら実演していく。
「この状態でトリガーを引けば、いつでも弾が発射される状態だ。万が一にも誤射しないように、こうやって人差し指は伸ばして、撃つ時まではトリガーに指を掛けないようにするんだぞ」
「わかりました!」
「うん、わかったよ!」
「よし、それじゃ次は『サイティング』だな」
「『サイティング』?」
「銃には『アイアンサイト』と呼ばれるものがあって、これはその中の『オープンサイト』っていう種類のものなんだけど、それで狙いをつけることをそう言うんだ」
「こことここに『フロントサイト』と『リアサイト』があるんだけど、これを合わせることを『サイトアライメント』って言うの。フロントとリアの山の高さを同じにするんだよ」
「そうそう。それで今から教える射撃方法は、そのサイトアライメントを取って行う『サイトピクチャー』っていう方法なんだ」
照準を合わせる方法は銃によって様々あるが、このP230だけでなく、ハンドガンではこの方法が基本となるものがほとんどだ。
「うぅ~、なんかややこしくてよくわかんないよぅ……」
「まぁ、言葉だとわかりにくいんだけどさ、要するに照準を合わせるにはこのリアからフロントを見た時に高さを合わせればいいだけだ。まずは俺と莉奈であそこの木に向かって撃ってみるから、それを横から見ててくれ。莉奈、いいか?」
「はい、わかりました」
勇馬と莉奈が少し距離を取って、木から10m程度離れた位置に立った。
「小さいけど、それでもやっぱり大きな音がすると思うから気をつけてくれ。それじゃあ、まずは俺から撃つぞ」
勇馬はP230を両手でグリップし、『ウィーバースタンス』と呼ばれる
これは利き手のほうの足を半歩引いた半身の姿勢で、敵に対して半身で構えるので敵に向ける体の表面積が狭くなるというメリットがあるも、その分利き腕方向に振り向きにくいというデメリットもある。
パンッ!
莉奈の持つM24の発砲音を聞いた後だと軽く感じる気もするが、その威力は生き物にとって間違いなく致命的なダメージを与えるものに違いはない。
「――と、こんな感じだ。見てもらうとわかるけど、木にしっかり当たったな」
「そんなに小さくても音はやっぱり大きいんですね。まずはこれに慣れないといけませんね」
「うんうん、耳を塞いで撃ちたいくらいだよね」
「試し撃ちとかならそれでもいいんだけど、実戦を想定するとそういうわけにもいかないしなぁ。まあ、慣れといたほうが無難かな。とりあえず、このP230のマガジンは7発だから、残り6発も撃ってみるぞ」
そう言って、勇馬は残りの弾をすべて撃ち切った。もちろん、全弾命中なのは言うまでもない。
「――よし、次は莉奈にも撃ってもらおう。莉奈は女の子だし、俺と違って実際に撃つ時の想像がしやすいかもな。もう1つのスタンスで撃ってもらっていいか?」
「『アイソセレススタンス』ですよね? やってみます」
アイソセレススタンスとは、真上から見た時に手と肩のラインが
「――いきます」
パンッ!
発砲音が大きすぎて勇馬達には聞こえないが、莉奈の撃った弾丸は木の幹にビシッという音とともに的中した。
「うん、いい感じだな。そのまま全部撃ってみてくれ」
「はい!」
莉奈は続けて残りの弾も連続で木の幹に撃ち込んだ。
多少の反動はあったが、特に問題はなさそうにすべて木の幹に命中させていた。
「やるじゃん! 全弾命中だな!」
「10mしか離れてないからっていうのもあると思いますけど、無事に当たってよかったです!」
莉奈は狙い通りに射撃でき、嬉しそうに喜んだ。
「さて、それじゃあ次は実際に2人にやってもらおうか」
「わ、わかりましたっ」
「うん! 頑張るっ!」
少し緊張していた2人に、弾を撃ち尽くしたことによってスライドが後退した状態である『ホールドオープン』のP230を渡し、マガジンチェンジから
「――さて、基本講座はここまでにして、実戦練習に移っていこうか」
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