第10話 VS! 魚人戦!

 どんどん臭くなってくる川を登っていく。

 こんなに臭いんじゃお鼻が曲がっちゃうよ。おきつね族の五感は素晴らしい物があるのだ。だから余計臭っちゃう。ぐすんぐすん。


 探感知を上手に使えるようになったアキちゃんがいろいろモード変更して遊んでいる。

 レベル10で持っているのでかなり広範囲を走査するから、アキちゃんが使いこなせれば向かう所敵なしである。


「ん、この先の広い空間にてモンスターらしき反応をキャッチしました!」


「敵の数と大雑把な格好はなに?」


「数は小さい反応が8、大きい反応が1。二足歩行生物だと思います!」


 川、油でベトベト、二足歩行……。


「魚人か?」


「なんでござるか魚人って」


「細い腕に大きな手と水かき、青いうろこに覆われた細いからだ、背中にはっきりとある赤い背びれ。悪魔のような顔をしている2足歩行動物。これが魚人。自分の出す脂で巣を作るのも特徴。ジダンのモンスター大辞典の情報だけどね。正確かどうかはわからない。以前戦った気もするんだけど忘れちゃったな」


「きんもー。ぴょん子帰っていいぴょんこ?」


 駄目って言われるの知ってるくせにー。


「山及び川の流れを崩すわけにはいかないでござるから大規模魔法は使えないでござるな。これは混戦になりそうでござる」


「私の『技』は使っちゃ駄目でしょうか。桜花気功斬破とか桜花竜巻脚とか」


 うーん、やめておいた方が良いな。


「今回はやめておこうね。桜花奥義・至極波動弾とかは絶対使っちゃ駄目だよ」


 それと。


「魚人ってめっちゃ火に弱いんだけど巣で火を使ったら脂が燃えさかって大爆発を起こすと思うんで火は厳禁! 環境が完璧に壊れちゃう」


「怪我したらすぐ回復するから安心してぴょん」


 準備が出来たら巣へと突進。巣の入り口は脂と岩が積み上げられており塞がっている模様。ここだけはアキちゃんの「技」だな。


「アキちゃん! 桜花衝撃打!」


「はい! うおおおおおおおおおらああああああああ!!」


 アキちゃんが入り口の壁数歩前で手を前に突き出す。

 するともの凄い衝撃波が前方に発生する!

 入り口は衝撃波でボロボロに!

 水を溜めていたのか、塞がれていた所から水が流れ出す!

 アキちゃんモロ被り! くっせー! アキちゃんくっせー!


「く、くさ、臭いです……ヒック、ヒック」


「アキちゃん戦闘に集中して! 匂いはクリーンアップで取れるよ!」


 アキちゃんを差し置いて突入する私たち。


 索敵通り普通の魚人が8匹、デカい親分級が1匹、戦闘態勢で待ち構えていた。

 相手の土地で戦うんだ、少し消耗しそうだな。負けないとは思うけど。


「臭いようわぁぁぁん! グスグス。くりーんあっぷー」


 すると範囲クリーンアップだったのか、巣の中の脂や汚れが綺麗に落ちちゃいました。

 さすがに魚人に付着している油は落ちなかったけど。


「これなら火が使えるでござるな! ぬん、光炎斬!」


 カザリンが一瞬で魚人の前に移動し、刀身に炎を纏わせた刀の一撃を魚人にたたき込む!

 魚人は大いに燃えさかりながら輪切りにされてオダブツだぁー!


「かざっちはや! 支援間に合わなかったよーパワーアップ!」


 力のステータスがぐんと上昇する! そこで私は!


「火炎弾装填! コイツを食らえー!」


 力が上がって銃の反動制御が楽になった!

 ババババババン!

 銃弾が嵐のように降り注ぐ、スキルじゃなく自力で行うバレットストームで魚人を圧倒!

 スキルがなくても鍛錬は裏切らない!

 魚人に当たった弾丸は胴体を撃ち貫いて大きな穴を魚人に作っている!

 さすが大口径リボルバー! 素の火力が高くて良い!


「私はボスと戦います!」


 そういってアキちゃんはボスへと向かっていった! 無理しないでね!


 ただ、いきなり2匹を倒したから取っても4対7で数の上では負けてる。

 全てに目が行くわけでもなくて……。


「雪菜殿、挟まれてるぞ!」


「うわ、マジだ! ってぇ、鋭いつめで切り裂かれた」


「ゆっきー大丈夫ぴょん!?」


「防具で守られたから皮膚に異常はないけど、痛い! この野郎! 初級スキルガスバーナー取得! オーバードライブレベル5! レベル16ガスバーナーを食らえええええ!」


 燃えさかる魚人。

 私とアキちゃんは良い防具装備してるけどカザリンとぴょん子はそうでもないんでダメージは私とアキちゃんに集中させたい。


 私が遠い魚人、カザリンが近づいた魚人、という風に倒す敵を分けて処分。8体の魚人を駆逐することに成功しましたぞー。本当火が使えるようになったのが大きい、クリーンアップをしたアキちゃんは怪我の功名だね。


 そんなアキちゃんはというと……。


「ぐう、中に入り込めない。マジックアロー!」


 苦戦していた。

 環境配慮で技が使えなくて、リーチ差で接近戦が出来ないのでちびちびと魔法を発射してた。


「アキちゃんが苦戦している、行くぞカザリン!」


「応!」


 ズドドドド!


「アキちゃん大丈夫!?」


「カザリンさんにご主人様! 私は防御スキルのオーバーコートスキルとマジックコートスキルがあるんで無傷なんですけど、ボスは爪を飛ばしてきます! 爪はすぐ再生するようです! あと、火が効きません!」


 そういやそうだ、私、昔は防御力強化スキル優先的に取ってたんだった。死なないためにね。アキちゃん派防御スキルも普通のレベル上限を超えて所持してるからな、ガッチガチやぞ。

 しかし火が効かないのか、コイツの脂は不燃性なのかも。

「爪を飛ばすんならこっちは銃弾を飛ばせばええねん。オラオラオラ!」

 弾丸をバンバン飛ばす。

 すると途中でバリアが出現して弾かれてしまった。


「わ、私の、最強ステータスで発射する弾丸を弾くだと……」


「ミサイルプロテクションかけてるのかもぴょん! あれは遠距離をほぼ完璧にガードするよ!」


「モンスターがスキル使うんですかー!?!?」


 こうなるとカザリン対魚人改(命名私)となる。頑張れ-カザリン!


「ぬん! 月光斬!」


 カザリン渾身の一撃!


「くそ、脂で滑って切れないでござる」


 あれれ、良くないな。何か良い手段を考えないとアキちゃんの技で環境ごと破壊して倒すしかなくなる。


 するとここで変なのが動く。指輪になってた夏芽だ。

 夏芽は指輪の形状から、どこにその質量が入っていたんだといわざるを得ないほど巨大に膨れ上がって、拳銃を伝い、銃口を剣先にしたのだ。銃剣か。

 銃剣は切るというより刺す武器だ。これで刺せば良いのか。


「カザリン! 私が銃剣で動きを止めるから心臓を狙って突き刺して!」


「わかったでござるが、出来るでござるか!?」


 やるしかなーい! 私の突進力はずば抜けていて、300キログラムの重りでも100メートル位吹き飛ばす威力があるのだ!

 その私が突撃すればー!

 ズドン! 魚人改にも効くのだ! 腹部に刺さって、突進の威力で壁まで滑る私と魚人改!

 夏芽は刺さった瞬間返しをつけて抜けないように工夫している。さらに魚人改の内部に自分をどんどん送り込んで重量のある物質に転化し、動けなくなるようにしている。この子便利だ……さすが超希少種。


「いくでござる! とぉ! ジャンピング突き刺し!」


 カザリンの重力を利用した渾身の突き刺しが脳天に決まって魚人改はノックアウト。

 これで全部の魚人を処理出来たぞ!


「ふー、お疲れ様。汚れはここからっぽいね、クリーンアップとキュアで浄化しちゃおう」


 アキちゃんの範囲クリーンアップと範囲キュアでなんども浄化して、汚れは取れた。


「ふう、こんなもんかな」


「なんかさー、水の量が少なくないぴょん? ほら、ここの線。ここまでは以前水が来ていたんでしょ? でも今はここまでしかない。山の上とはいえ洪水が起きて出来た線でもないし」


「山頂まで登るでござるか?」


「あたしはそうしたい。上の方で詰まってるかもしれない」


 パリピがいつになく真剣に訴えているので登ってみることに。


 いやーしかしここでも眺めが良いなあ。山頂だとどれだけ眺めが良いんだろう。


 そして山頂。

 いやー凄い景色だよ。ジダンが見えるしレングスもヘックスも見える。望遠系スキルがあればドティルティさえも見渡せるだろう。

 この山、実はかなり巨大だったようだ。ぴょん子がバテバテで登っていたのはそのせいか。ぴょん子が普通、余裕で登った私が異常だな。


 さて湧き出る水はというと。


「うーん、湧き出る部分に金属の球が詰まってる、かな?」


「皆さん触らないでください! 球に呪いがかかってます。私は呪い無効化レベル10なので大丈夫ですけど」


「今回の騒動、どう見ても人間の仕業だよね。毒も汚れもこの山には生息しないもん。止めに金属の球だし。あたし許せないんだけど」


「ぴょん子の気持ちはわかるけど今は何も出来ないよ。じゃあアキちゃん、桜花衝撃打とかで砕いちゃって。振動打の方が環境負荷少ないけど、振動じゃ金属割るの難しいからね」


 じゃあ、といって桜花衝撃打を放つアキちゃん。


 ダン! という音と共に呪いの金属が割れ、水が噴き出してくる。それはもう大量に。

 吹き上げられないように山頂の端っこに退避したけど、落ちてくる水で虹が架かっている。

 この光景はそれはもう幻想的で。

 それはもう力強くて。

 それはもう神秘的だった。

 TSSって凄い。


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